『鎌倉殿の13人』頼朝と義経、愛し合っていたはずなのに…… 西田敏行の“狸ぶり”がすごい
また第19回で頼朝は、大切な人を傷つけたことにも傷つく。頼朝は八重(新垣結衣)と言葉を交わす中で少しだけ心が軽くなった。頼朝は、義時や政子、八重など、限られた人の前では少しだけ心を開く。
「義高(市川染五郎)だって殺したくはなかった」という言葉は本音のはずだ。ただ、タイミングが悪かった。その言葉は義高を慕っていた大姫(落井実結子)の耳に届いてしまう。大姫に対する「何でいるかなあ」というセリフだけ見ると、責任逃れのように感じられるかもしれないが、この言葉でしか自分をフォローできなかったのだとも思う。一番傷つけたくなかった大事な娘を傷つけてしまった、そのことに頼朝自身、ショックを受けたはずだ。
思い合いながらも仲違いする頼朝と義経が切ない回だったが、その元凶である後白河のインパクトも強かった。後白河は大きな力とそれに抗う力が衝突するのを楽しんでいる節がある。後白河を演じている西田の声色は気さくに響くが、ねっとりとした物言いには独特の圧力がある。悪びれる様子もなく、義経を演技で騙したことを楽しそうに話す後白河だが、「頼朝が清盛(松平健)になられては困るからの」と言う後白河の目つきは鋭い。鞠で遊ぶかのように、頼朝らを手のひらで転がそうとする後白河。頼朝の脅しによって釘を刺された後白河だが、当然そのまま引き下がるわけがない。三谷幸喜は後白河の最後を一体どのように描くのか。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK