『イカゲーム』が大賞、ジュノ&キム・テリが最優秀演技賞に 第58回百想芸術大賞を総括

第58回百想芸術大賞を総括

ジュノ&キム・テリが錚々たる俳優陣を抑え最優秀演技賞受賞

『袖先赤いクットン』(MBC公式サイトより)

 『イカゲーム』のイ・ジョンジェや『悪の心を読む者たち』のキム・ナムギルなど錚々たる候補を抑え、『赤い袖先(原題)』のジュノが「最優秀演技賞(男性)」の受賞者に選ばれた。彼は、痛みや情熱、哀しみや孤独といった複雑な感情を抱えたイ・サンの生涯を繊細に表現した。『赤い袖先』での彼の演技を見た人なら、誰もが納得する結果ではないだろうか。それほどに彼はイ・サンそのものだった。

 「正直、この賞を本当にもらいたかった。でも、感想を準備することに関してたくさん考えた。私が望む夢と現実が違う場合があるから。『赤い袖先』を共にしてくれたすべての方に心から感謝したいという言葉を伝えたい。見守ってくださったすべてのファンの方々に本当に感謝している」と感想を述べた。(※2)同じくアイドル出身であり、最優秀演技賞にノミネートされていたイム・シワンが、ジュノに熱い拍手を贈っていたのも印象的だった。圧巻の完成度を誇った『赤い袖先』だったが、ジュノの受賞のみに留まり、作品関連の賞を逃したのは意外な結果だった。

 「最優秀演技賞(女性)」には、『未成年裁判』のキム・ヘスや『赤い袖先』のイ・セヨンらが並ぶ激戦の中、強烈な存在感と唯一無二の表現力で劇を導いた『二十五、二十一』のキム・テリが受賞。ハツラツとして、可愛らしさが滲み出る彼女のスピーチは、まさにドラマ『二十五、二十一』のヒドそのもののようだった。

二十五、二十一
『二十五、二十一』(写真はtvN公式サイトより)

 「『学ぶということは誰も手を貸してくれず、私が自ら手に入れるもの』と以前に私が書いた文を見た。ヒドからホントにたくさんの事を学んだ。私があの素敵な子を演じることができてとても感謝している」と語り、「このドラマのために努力してくださったすべての方が一緒に祝ってもらっているようで、気分がとても良くて本当にとても幸せ。この賞は『二十五、二十一』作品に捧げたい」と作品への格別な愛情を示した。(※3)

 ドラマ初主演作『ミスターサンシャイン』でも百想にノミネート、続く2作目となる今作で見事受賞を果たしたことからも彼女の凄みがわかる。

 ジュノとキム・テリは、インターネット投票によって選ばれるTikTok人気賞も共に受賞しており、圧倒的な演技力と絶大な人気の両方を証明した形となった。俳優のキャリアに囚われず、若手ベテラン問わずただただ「演技力」を優先した選択は、さすが百想だと感嘆せずにはいられない。

チョ・ヒョンチョル、「闘病中のお父さんへ」感涙のスピーチ

キム・シンロク『地獄が呼んでいる』(Netflixにて配信中)

 『D.P. -脱走兵追跡官-』で、傷によって壊れていく人間の姿を繊細に描き出したチョ・ヒョンチョルが助演賞(男性)を受賞したが、その受賞スピーチの中で、闘病中だという自身の父親に向けてメッセージを贈る場面があった。彼の温かな言葉は、視聴者と会場を涙で包み込んだ。

 病床にいる父親に「勇気をあげたかった」と語った彼は、「目を少しだけ向ければ庭の窓の外に赤い花が見えるじゃない? おばあちゃんがそこにいるから怖がらないでほしい。私は死というのはただ単に存在の仕方の変化だと思う。快適によく寝ていてほしい。恐れないで最後の時間を美しく過ごしてほしい」(※4)と語り、会場は温かな拍手で包まれた。

 『地獄が呼んでいる』で、死を控えて恐怖に満ちた人間の感情を立体的に描き出し、助演賞(女性)を受賞したキム・シンロクのスピーチも印象的だった。「この賞を絶対に獲りたかった。最初で最後かもしれないと思い、本当に受けたかった」と語りながら、涙が止まらなかった。

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