『インビジブル』はヒーロー映画にも通じる? 2次元をも行き来する高橋一生&柴咲コウ

『インビジブル』はヒーロー映画にも通じる?

ルールに縛られる今こそ楽しみたい作品

 また、本作は『ROOKIES』(2008年)、『クロコーチ』(2013年)と、TBSで人気漫画の実写化を手掛けた脚本家・いずみ吉紘のオリジナル作品でもあることも、この漫画のような設定と疾走感につながっているのかもしれない。

 自らの「作品だ」とでも言わんばかりに、劇場型の事件を仕掛けていく“クリミナルズ”。そんな凶悪犯の存在にさえ気づくことができず、後手後手にまわってばかりの頼りない警察組織。現実社会においては、そのような図が成り立っては困る。だが、これはフィクション。だからこそ、常識外れなタッグが必要だし、ルールに縛られない作戦が功を奏する世界線なのだ。

 例えば、キリコが住む“民宿”と呼ばれる警視庁管轄の要人用シェルターは豪華な洋館風。囚われの身ではありつつも、好きなものを食べ、好きなファッションを楽しむキリコに、「いくら捜査協力をするとはいえVIP過ぎる」なんてツッコミたくなるところも。だが、普段表の社会にいる私たちには見えていないだけで「もしかしたらそんな犯罪者VIPがいるのかもしれない」なんて想像して楽しんだもの勝ちだ。

 ドラマには、リアルと連動したヒリヒリするような作品がある一方で、こうした空想的な作品があってもいい。特に、日々苦しいニュースに心が荒み、様々なしがらみにとらわれがちな今を生きる私たちにとっては。自分の思うままに暴れてくれる志村や、大胆不敵に手のひらで人々を動かしてしまう魅惑的なキリコの存在が一服の清涼剤となってくれる。

注目は、散りばめられた数多くの謎たち

 高橋×柴咲の心強いタッグの上に、エンタメ性に突き抜けた自由度の高いオリジナル脚本。ここから、どう舵を切っていくのだろうか。その主軸となるのが、志村の追う3年前の未解決・通り魔殺害事件。志村が暴走しがちになったのは、その事件で元同僚・安野が命を落としてからだと言われている。加えて、キリコとタッグを組むことになったのも、この事件の情報を握っていると見込んでのこと。この事件の真相がどのように明かされるのだろうか。

 また、正義感の強い監察官の猿渡(桐谷健太)と志村との対立も気になるところ。事件解決のために問題行動を繰り返す志村に目を光らせるのは、職務上当然のことかもしれないが、あまりにも執拗に追いかける姿は、刑事と監察官以上の因縁があるのではないかと考えてしまう。

 さらに、“インビジブルに翻弄される警察組織”を地でいく刑事部の面々だが、捜査一課課長の犬飼(原田泰造)や警部補の磯ヶ谷(有岡大貴)、特命捜査対策班班長の塚地(酒向芳)らが、今のところほのぼのとしてしすぎているような気もする。人のいい刑事たちで終わるのだろうか……なんて考えてしまうのは想像力を働かせすぎだろうか。

 そして最大の謎は、インビジブルと呼ばれるキリコの背景だ。今のところ各話で登場したクリミナルズたちのバックグラウンドもほとんど描かれていない。なぜ彼らがクリミナルズになったのか、どのようにしてキリコがインビジブルと呼ばれる存在になったのか。そして、どうして志村に近づくことにしたのか。刑事と犯罪者でありながら、協力関係にある志村とキリコの複雑な縁。やはり最後は、高橋×柴咲が魅せる絆の在り方が楽しみでならない。

■放送情報
金曜ドラマ『インビジブル』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:高橋一生、柴咲コウ、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、堀田茜、谷恭輔、大野いと、板垣李光人、西村元貴、結城モエ、田中真琴、村井良大、酒向芳、原田泰造、桐谷健太
脚本:いずみ吉紘
演出:竹村謙太郎、棚澤孝義
プロデューサー:佐藤敦司
編成:東仲恵吾、佐藤美紀
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/invisible_tbs/
公式Twitter:@invisible_tbs

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