高橋一生の『インビジブル』までの軌跡を振り返る “直虎と政次”がタッグを組む喜び
高橋一生と柴咲コウ。2人が並んでいる姿を見るだけで心が沸き立つ人は多いだろう。なぜならあの、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の直虎(柴咲コウ)と政次(高橋一生)を演じた2人が、ドラマ『インビジブル』(TBS系)で再びタッグを組むのだから。
4月15日から放送が開始される金曜ドラマ『インビジブル』は、『クロコーチ』(TBS系)、『トドメの接吻』(日本テレビ系)などを手掛けるいずみ吉紘によるオリジナル脚本だ。「インビジブル(invisible)」とは「目に見えないもの」のこと。本作においては、「裏社会に精通する、あらゆる凶悪犯罪者たちの取引を仲介する犯罪コーディネーター」のことをそう呼ぶらしい。「インビジブル」を名乗る、柴咲コウ演じる謎の女性・キリコが、高橋一生演じる、人一倍正義感の強い刑事・志村貴文の前に現れ、世に知られていない凶悪犯、通称「クリミナルズ」を捕らえるため手を組まないかと持ち掛ける。犯罪コーディネーターという「悪」と、刑事という「正義」が組み合わさり、「異色のバディ」となる時、どんな化学反応を見せるのかが見どころである。
高橋一生と柴咲コウの共演は、直接的な絡みはない映画『世界の中心で、愛をさけぶ』を入れれば、共に森下佳子脚本の『おんな城主 直虎』、NHKテレワークドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』の第3夜『転・コウ・生』に続いて4度目となる。本稿は、2017年放送の『直虎』から本作に至るまでの2人の共演作、並びに主演・高橋一生の軌跡を振り返ることで、ドラマ『インビジブル』、そして彼が演じる新たな人物“志村貴文”への期待としたい。
いつまでも忘れられない『おんな城主 直虎』第33話
『おんな城主 直虎』において「城主」となった幼なじみ・直虎を家老として影で支え、必要とあれば裏切ったふりをしてでも彼女を守り続けた政次は、その末に処刑されることとなった。「共に地獄に落ちる」かのように、直虎自身の手にかかって政次が死ぬ第33話は未だに語り継がれる名場面である。人目を忍び、月明かりの下で碁を打っていた2人は、共に「陽の光の下で打つ」日を夢見て、叶わぬままだった。
同じ月を眺めた『転・コウ・生』
だが、太陽と月の物語は終わらなかった。コロナ禍の初期とも言える2020年、緊急事態宣言により撮影の中断を余儀なくされ、新作ドラマの多くが放送できない状態になり、今だからこそできる新しい表現方法はないかという作り手の模索の中で生まれたのが、テレワークドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』だ。そのオムニバスドラマの第1話に、森下佳子脚本による、柴咲コウ、高橋一生、ムロツヨシと猫1匹の入れ替わり劇「転・コウ・生」があった。彼らの入れ替わり、猫と“シバサキコウ”という形での高橋と柴咲のやり取り、そして何より、彼らが離れた場所で同じ月を眺める姿を観るのは、直虎ファンとって至福のひと時であったが、それと同時に『転・コウ・生』は2021年1月期放送の日曜劇場『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)への布石でもあった。