“妹に迷惑をかける兄”が朝ドラ連続登場 『カムカム』算太と『ちむどんどん』賢秀の共通点
ついに黒島結菜、川口春奈、上白石萌歌とメインキャストが登場しはじめたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第3週。比嘉家のひどい困窮や借金をの負担を軽減させるために暢子(稲垣来泉/黒島結菜)がひとり、東京に行く予定だったものの、まさかの“行かない”という展開に驚かされ、そこからすでに7年の時が経過していた。長女の良子(川口春奈)は先生になり、砂川智(前田公輝)も自身の豆腐店を大きくするために奮闘するなど、子供の頃から思い描いていた未来予想図通りに頑張る21歳の姿が眩しい。ところが、そんな2人と強いコントラストを放つ21歳が、あの比嘉家長男・賢秀(竜星涼)だった。
喧嘩とボクシングに明け暮れて、高校まで行かせてもらったのにも関わらず中退。その後、なんとか那覇や名護に働きに行ったもののどれも長続きせず、今は完全ニートになっていた。暴行事件で警察のお世話になるも特に気にしていない様子から、こういったことが日常茶飯事に起きていることが伺える。「ニーニー、いい加減にして」と妹たちに嗜められるものの、悪びれる様子もない。しかし、殴った相手が暢子の就職先の社長の息子ということで、彼女の内定は取り消されてしまった。番組公式サイトには「素行も悪いが心優しい家族思い。常に『比嘉家の長男』を自負し、家族のためにさまざまな挑戦をするが、かえって迷惑をかけることが多い」と書かれている(※1)。
子供の頃から母が汗水垂らしてようやく買ってあげた体操服や靴を、最も簡単に一番でダメにしてしまうところがあった賢秀。そのせいで良子が運動会に行けなくなり、最終的には泥まみれの体操着を着て参加する羽目になるなど、やはりすでに妹たちに迷惑をかけるキャラだった。大人になった今でも給料を前借りしたバイトを2時間でやめ、その給料を返すどころか一晩の酒代に浪費。しまいには母・優子(仲間由紀恵)がそのお金を返しに行ったというので、本当に頭が痛くなるような人物像に成長してしまったことがわかる。父親の死に関しても「あれから何年経つか」と定かでない点も気になったり、その頃の家の困窮をも忘れてしまったかのように、悪気なく家計にダメージを与えてしまうという描写がすごい。共同売店の店主・前田善一(山路和弘)が家にやってきて「暢子の就職の話が無しになった」と重大ニュースを告げても、ただ一人だけ気にせずに食事を続ける様子など、少し“家族思い”という設定を考えさせられてしまうものだ。
しかし、彼が彼なりの正義を持っていることも確かである。もともと、暴行も酒を飲んでいた若者が老人を突き飛ばしたのを見て、黙っていられなかった彼の正義感の強さが生んだ行為だ。とはいえ、「暴力」=「正義の行い」が正しいのかというのも新たな疑問ではある……。
こんなふうに、とにかく頭を抱えてしまうほど妹たちに迷惑をかけまくっている賢秀のお兄ちゃん像は、ひとつ前のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に登場した算太(濱田岳)を彷彿とさせる。