“妹に迷惑をかける兄”が朝ドラ連続登場 『カムカム』算太と『ちむどんどん』賢秀の共通点

妹に迷惑をかける兄像が朝ドラで定着?

 算太も安子(上白石萌音)が幼い頃から自由気ままな性格で、家の手伝いも特にせず、家業も継がずに自分のやりたいこと(ダンス)だけを追っていた。しかし、彼の場合は徴兵され、過酷な戦禍を生き抜いた経験がある。無事に帰還すると、安子と娘のるい(古川凛)がお世話になっていた雉真家にそのままお邪魔することになるのだが、そこで安子が「たちばな」再建のために必死に貯めていた資金を持ち逃げしてしまった。それも、心を寄せていた雪衣(岡田結実)が勇(村上虹郎)の寝室から朝出てくるのを目撃し、傷心した彼のとった行動なのだが……自分の失恋に妹の未来を巻き込んで壊し、行方をくらませた彼はなかなかの“ひどい兄”だった。しかし、それでも憎みきれない人間くささがあったのが、良いところでもあったのだ。

 それに通じるものを持つ賢秀を演じた竜星涼は自身の役柄を「嫌われるか好かれるかのどっちかだと思います」と語っている。続いて、「プロデューサーさんが脚本上ではすごく憎まれるようなニーニーなはずなんだけれど、僕がやるとチャーミングで愛くるしい形になると言ってくださる」と言っているように、賢秀は意識的に視聴者から嫌われやすいキャラクターとして描かれているのだ(※2)。そもそも、四兄妹全員が性格が良かったり、頼りがいがあったりしても、どこかそれは童話的すぎるのかもしれない。現実は、本作が着想を得た『若草物語』のようにはいかないのである。ある意味、兄妹のなかに一人くらいああいう人の話を聞かない、自由すぎる破天荒な人物がいるのもリアルだ。

 算太は結局、お金を持ち逃げしたまま妹・安子と生き別れになって、再会もできずにこの世を去ってしまった。今のところ『ちむどんどん』に『カムカムエヴリバディ』のようなダークな展開は見受けられないものの(とはいっても、大森南朋演じる父・賢三が突然死んでしまったのには驚かされたが)、これからはいかに賢秀が改心し、“本当の意味で”家族想いの兄として成長していくかが見どころになりそうだ。

参照

※1. https://www.nhk.or.jp/chimudondon/cast/kenshu.html
※2. https://mantan-web.jp/article/20220423dog00m200032000c.html

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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