『サマータイムレンダ』序盤から怒涛の展開に 花江夏樹が和歌山弁で等身大の高校生を好演

 2022年春アニメもようやく出揃ってきたが、今期も豊作といった印象でアニメファンにとっては嬉しい悲鳴だろう。中でも4月14日にスタートしたSFアニメ『サマータイムレンダ』は各方面から熱い視線を集めている。

『サマータイムレンダ』公式サイトより

 原作は『少年ジャンプ+』(集英社)にて2017年10月から2021年2月まで連載されていた田中靖規による漫画『サマータイムレンダ』。脱出ゲーム(中止が決定)、実写化など、様々なメディアミックスが展開されることが発表されており、アニメ化はその一環となっている。本作は和歌山県にある架空の離島・日都ヶ島を舞台に繰り広げられるSFサスペンス。主人公の網代慎平は、幼なじみで義理の兄妹である小舟潮が亡くなったという知らせを受け、日都ヶ島へ2年ぶりに帰省するところから物語は始まる。

 第1話から怒涛の展開が待ち受ける本作。潮の葬儀に出席した慎平だが、幼なじみの菱形窓から潮の首に吉川線が見つかったことが明かされ、他殺の可能性を示唆される。後日、警察官の凸村哲から小早川一家が消えてしまったことを告げられるのだった。そこで原因として浮かび上がってきたのが“影の病”と呼ばれる「影を見た者は死ぬ」という言い伝え。小舟澪も姉の潮が亡くなる3日前に潮の影を見たという。最初は信じることができなかった慎平だが、真実を確かめるべく澪とともにヒルコ様(日都神社)へと向かう。そこには血まみれで倒れている南方ひづるともう一人の澪の姿があった。「影」が重要なキーワードであることは第1話から分かるが、その正体は依然として謎なままだ。また、ラストで慎平が物語の始まりのシーンに戻されたことは物語のキーになりそうである。

 また、和歌山県の自然や人物の描写がとても美しく繊細に描かれているのも本作の特徴だ。人物の瞳の描き方や海の鮮やかな色合い、事細かに描かれた町並みなど、原作では表現しきれないところまで細やかに補完されていたので、引き込まれるストーリーとともに繊細な作画も楽しみながら見ることができた。中でも、渡辺歩監督もインタビューで「作品全体としては影の暗さをより黒く感じてもらえるように意識しています」と語っていたように、全体を通して光と影のコントラストがくっきりと表現されており、作中で重要な意味をもってくる影を強調していたのも印象的だった(※)。

 ストーリーや作画はもちろん、物語を彩る個性的なキャラクターも本作の魅力となっている。主人公の慎平は自分を俯瞰して考える癖があるキャラクター。冒頭にひづるの胸にダイブしてしまったときにも、自らを俯瞰させて落ち着きを取り戻していた場面があった。そんな慎平を演じるのは『鬼滅の刃』の竈門炭治郎や『進撃の巨人』のファルコ・グライスでもお馴染みの花江夏樹だ。これまでも数々の人気キャラクターを演じてきた花江だが、今期もまた『ラブオールプレー』で主人公の水嶋亮を務めている。

 『鬼滅の刃』のブームもありすっかり炭治郎の声の人という印象がついてしまったが、それ以前にも『四月は君の嘘』の天久将馬から、『東京喰種トーキョーグール』の金木研まで、多彩な役柄を巧みに演じ分けてきた。本作でも至って普通の高校生の役へもフィットしていて、原作に忠実な等身大の姿が浮かび上がっていた。また、本作では登場人物のほとんどが和歌山弁ということで、花江もまた和歌山弁に本格的に挑んでいることも大きな注目を集めている。最初こそ標準語だった慎平が島に馴染んでいくにつれ、次第に和歌山弁のイントネーションになっていくその変化を花江はあたかも自然に表現していたことに驚かされた。

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