DCがMCU的な手法で製作 『ピースメイカー』はアクションもお下劣も大人向け!?

『ピースメイカー』は大人向けDC作品

 『ピースメイカー』はDCコミックのキャラをベースにしたドラマシリーズです。昨年公開された映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』に登場したピースメイカーことクリストファー・スミスを主役にしています。映画同様、本キャラを演じるのはジョン・シナ。WWEの大スターであり最近では俳優としても活躍。製作総指揮&メインの監督を務めるのも映画同様ジェームズ・ガンです。

 元々、DCは映画だけでなくドラマも積極的に展開していました。ドラマについてはマーベルよりも先行していたと思います。だから“DCドラマ”というのは珍しくないのですが、本作がユニークなのは、映画と連動したドラマシリーズであること。もう少し詳しく言うと、DCは映画とドラマを“別物”としていました。一番わかりやすい例は『ザ・フラッシュ』で、TVドラマシリーズはグラント・ガスティンが演じているのに対し、同時期に公開されたDC映画ではエズラ・ミラーが演じていました。なお、このドラマと映画は違う世界観です(後にマルチバースの関係とされましたが)。一方マーベルは、映画とディズニープラスで配信されるドラマは同じ世界観=マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中の出来事としており、“映画の続きをドラマで楽しむ”という手法を編み出しました。つまり、今回の『ピースメイカー』はマーベル的な手法をDCがようやく取り入れた作品となるのです。

 ピースメイカーはその名のとおり、平和を作る者。身に付けた戦闘スキルで悪人どもをやっつけ、平和のために戦う人です。特殊なヘルメットというかマスクを被り、胸には平和の象徴である鳩のマークが。この設定を聞くと典型的なヒーローなんですが、彼の扱いはヴィランです。なぜか? それは、彼が「平和=社会の秩序」を守るためなら手段を選ばないからです。相手が社会に害をなすと判断すれば、容赦なく殺しまくる危険人物なのです。それ故、犯罪者として30年の刑期をくらい、収監されていました。しかしその腕を買われ、犯罪者=ヴィランだけで構成された特別チーム「スーサイド・スクワッド」にスカウトされます。この時の彼の冒険を描いたのが『ザ・スーサイド・スクワッド』です。しかし映画のラストで致命傷を負い病院送りに。『ピースメイカー』はその後の彼のお話です。

 個性派ぞろいの『ザ・スーサイド・スクワッド』でも極めてユニークな人物であり、またコスチューム姿もキャッチ―。シナの好演(怪演)もあって人気キャラとなりました。ガン監督も、もっとこの人物を深堀したくなったんでしょうね。というわけでドラマ化された本作。本人はいたって真面目に“正しいこと”をやっているつもりなのに、はたから見ればとんでもないサイコ野郎。ガン監督はピースメイカーを“裏キャプテン・アメリカ”的にとらえているようです。このドラマ版ではピースメイカー/クリストファー・スミスが減刑と引き換えに、 “バタフライ計画”なる恐怖の陰謀に立ち向かいます。ストーリーは王道のアクション・ヒーローものですが、本作の楽しさはやっぱりこのピースメイカーの天然ぶり。また彼を取り巻く人物も曲者ぞろいで、その掛け合いが面白い。

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