『進撃の巨人』回想で明かされたエレンから仲間への“愛” 2023年完結編放送のサプライズも

 Bパートではエレンの回想が始まり、フロックとの密談、そしてヒストリアとの対話が交互に描かれていく。エレンは「全ての敵をこの世から一匹残らず駆逐する」と本心を告げると、ヒストリアはエレンの考えを間違っていると拒絶する。続けて、エレンの母親のように殺される理由も分からず死んでいく犠牲者を増やすだけだと訴えるヒストリア。だが、エレンもそのことは重々承知の上で、憎しみの連鎖を完全に断ち切るための苦渋の決断だった。

 さらに、ジークとの会話を通してアッカーマンが宿主を守る習性がないことが明らかとなった。以前、エレンはミカサに対して執着する理由がアッカーマンの習性にあると伝えていたが、アルミンの言う通り、それは真っ赤な嘘だったのだ。そしてそのミカサの好意がアッカーマンの習性ではないとするならば、ミカサの行動は愛によるものだとジークはエレンに告げる。ミカサの好意を知ったエレンだが、彼には長くて4年の命しかない。そこでエレンが望んだのは自分が死んだ後も、幸せに生きてほしいということだった。エレンの過激な行動の根底には仲間を守りたいという思いがあるのだと気づけただけでも救いなのかもしれない。

 ラストには世界連合艦隊が地ならしを阻止するべく立ち向かう模様が描かれた。しかし、人類の強力な武器をもってしてもなお、巨人の進行は止まらない。次々と破壊されていく艦隊。もはや人類に巨人の進行を止める手立ては一切残されていない。押し寄せる巨人の群れと無表情で影を帯びた人類の対比が恐怖感をさらに煽っていた。海を渡り歩く巨人のアニメーションも圧巻で、原作以上に迫力のあるシーンになっていた。押し寄せる巨人と人類の構図は、『進撃の巨人』第1話の構図そのものだ。

 『進撃の巨人 The Final Season』を振り返ってみると、制作会社がWIT STUDIOからMAPPAに変わっただけではなく、作品が扱う題材も第1期から第3期までとはガラッと変わり、巨人VS人間の対立構造から人間VS人間による憎しみの連鎖が描かれてきた。WIT STUDIOへの評価が高すぎたがゆえにMAPPAに求められる水準が高いものになっていたはずであるが、賛否両論あるなかで筆者としては想像以上のクオリティで仕上げてくれた制作陣には感謝を伝えたい。

 原作にして残り2巻分を残して一旦の区切りを迎えたわけだが、放送後には2023年に完結編が放送されるというサプライズがあった。原作派もアニメ派も、楽しみが延びたと思って気長に待とうではないか。

■配信情報
TVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』
dTV、dアニメストア、GYAO!、Netflix、TELASA、ひかりTV、U-NEXT、Amazon Prime Videoほかにて、配信中
キャスト:梶裕貴、石川由依、井上麻里奈、下野紘、三上枝織、谷山紀章、細谷佳正、朴ロ美、神谷浩史、子安武人、花江夏樹、佐倉綾音、沼倉愛美、増田俊樹、松風雅也
原作:諫山創(別冊少年マガジン/講談社)
監督:林祐一郎
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:岸友洋
総作画監督:新沼大祐、秋田学
演出チーフ:宍戸淳
エフェクト作画監督:酒井智史、古俣太一
色彩設計:大西慈
美術監督:根本邦明
画面設計:淡輪雄介
3DCG監督:奥納基、池田昴
撮影監督:浅川茂輝
編集:吉武将人
音響監督:三間雅文
音楽:KOHTA YAMAMOTO、澤野弘之
音響効果:山谷尚人(サウンドボックス)
音響制作:テクノサウンド
アニメーションプロデューサー:川越恒
制作:MAPPA
(c)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
公式サイト:https://shingeki.tv/final/
公式Twitter:@anime_shingeki

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