『カムカムエヴリバディ』新川優愛の声色に伏線はあった? 裏で進行していた小夜子の恋

『カムカム』新川優愛の声色に伏線はあった?

 小夜子と吉之丞が結婚することを知ってから改めて第91話を見返すと、2人の関係が深まっていることが分かる。テレビを設置するため、吉之丞が大月家へやってくる。続いて、小夜子も新年の挨拶にやってきた。小夜子の第一声は大月家に向けた「あけましておめでとうございます」なのだが、次に小夜子は「おめでとう」と笑顔を向ける。カメラが引くと、目線の先には吉之丞がいた。この際、新川が見せた笑顔は、これまでの笑顔とは異なる。桃太郎やひなたの前では、優しげな微笑みを浮かべている小夜子だが、この時の新川は、目尻がグッと下がり、少し無邪気さも感じられるような満面の笑みを浮かべていた。小夜子らしい笑顔であることには変わりないが、視聴者に「おや?」と思わせるような違いがその笑顔にはあった。

 そして第92話。ひなたと一恵(三浦透子)に結婚を報告したとき、小夜子は桃太郎が自分に思いを寄せていたことについて「そんなん本気なわけあらへんやん」と答える。小夜子にとって桃太郎が“桃ちゃん”でしかないことがはっきりと証明されてしまった。

 成長した桃太郎は小夜子にふさわしい男になるために勉強も野球も頑張ってきたが、考えてみると、新川の桃太郎に向けての演技は、野崎演じる桃太郎から青木演じる桃太郎になっても変わっていない。一方で吉之丞に対する演技では新川は心を弾ませる。吉之丞に「映画館の近くでお茶飲んでいこか」と言われたとき、新川は可愛らしい笑顔でうなづき、桃太郎と別れ、荒物屋「あかにし」に向かうその足取りは軽い。

 ほろ苦い結末を迎えた桃太郎の恋は、新川があくまでも桃太郎をひなたの弟の“桃ちゃん”として、そして12歳年下の生徒の1人として接し続けたおかげで、その切なさや苦しみがより際立ったように思う。小夜子らしい品のある佇まいを崩さず、桃太郎と吉之丞に見せる表情のちょっとした違いで小夜子の思いを演じ分けた新川の、今後の役者活動に期待が高まる。

※野崎春の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる