『カムカム』青木柚演じる桃ちゃんの歓喜と絶望が1話の中に 勇&算太からの切ない継承も

『カムカム』桃太郎の歓喜と絶望が1話の中に

 子供の頃から一途に小夜子(新川優愛)を思い続けてきた桃太郎(青木柚)。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第92話で、そんな桃太郎が失恋をする。

 小夜子が結婚を決めた相手は、ひなた(川栄李奈)と一恵(三浦透子)も開いた口が塞がらない吉之丞(徳永ゆうき)。ひなたと空き瓶を取り合いガキ大将だった、あの吉之丞だ。

 桃太郎の失恋の仕方はなんとも切ない。監督に「サードに入れ」と言われた桃太郎は小夜子(学校では藤井先生)の元へレギュラー入りを報告しに行く。そのまま小夜子から「一緒に帰らへん?」と誘われる桃太郎。いいムードの中、桃太郎は覚悟を決め「もし来年甲子園に出られたら、その時は小夜ちゃん……」と切り出すも、そこに横入りしてくるのが吉之丞である。彼と映画のデートに向かうついでに小夜子は桃太郎とあかね通り商店街まで帰っていただけだった。

 ここで効果的に演出されているのが、桃太郎の動揺の声だ。「(えっ)」の連呼は桃太郎の困惑を表すのと同時に、2人の会話が耳に入って来ないことも我々に体感させている。「桃、新しいテレビの調子どうや?」と吉之丞に話しかけられ、そのまま「えっ」と声に出る桃太郎もユニークだ(桃太郎には申し訳ないが)。

 桃太郎にとって7月20日は「レギュラー入り記念日」であり「サラバ記念日」にもなってしまった。子供の頃から思い続けていただけでなく、実際にアプローチもしていた桃太郎。しかし、小夜子には本気にされていなかったのがこれまた切ない。小夜子にとって相応しい男になるため、勉強も野球も頑張ってきた桃太郎だが、その年の差は埋められず、ひなたの可愛い弟くんであり、生徒の一人としてしか見ることはできなかったというわけだ。

 第92話の冒頭で桃太郎はレギュラー入りも相まって小夜子に半分告白しかけるような絶頂を迎えるものの、そこから失恋という彼にとっての絶望を味わうこととなる。つまりは演じる青木柚にとっては、1話の中で大きく桃太郎の2つの表情を演じ分けているということもである。素直で少しおませな少年のイメージだったこれまでの桃太郎は青木柚にとってあまり演じたことのない役柄であった。だが、小夜子の結婚の知らせを聞きベッドで打ちひしがれる姿で思い出されるのは、同じNHKで放送されていたよるドラ『きれいのくに』での誠也役である。

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