韓国社会だけの問題ではない 『今、私たちの学校は…』があぶり出した人間の恐ろしさ
ウイルスを征服しても人間味あふれる世界は戻らないだろう。最も醜い部分を見たあとも、人間は美しいと思えるだろうか。
ーービョンチョル
科学教師ビョンチョルの言葉。お前が言うか、とツッコミを入れたくなるが、ウイルスが蔓延し、砲弾が飛び交う世界を見渡すと、彼と同じような思いが胸に去来する。
そのことはあとで話そう。明日かあさってか、もしくは来週。ここから出て食事をしてお風呂にも入って、それから話そう。まだ話すことが、たくさんある。何があっても諦めないで。いいわね?
ーーオンジョ
自分を溺愛する母親がゾンビになった姿を見て、衝撃を受けるチョンサン。どう生きればいいのか途方に暮れてしまったチョンサンに、オンジョは問題の先送りを提案する。極限状態で考えをめぐらせれば、何事も悪いほうに考えてしまうもの。いったん先送りにするのは良い方法だ。後に、最愛の父親を亡くしたオンジョに対して、チョンサンが同じ言葉をかけて慰める。
みんな、家に帰ろう。家に帰ろう。
ーージュニョン
体育倉庫から脱出しようとするチョンサンたちだったが、ジュニョンが考えた方法はゾンビに破られてしまい、ジュニョンはゾンビにかまれて感染してしまう。自ら外に飛び出したジュニョンは、ゾンビを引き剥がしながらこう叫び続けた。
Netflixが公開した「出演キャスト特別映像」動画によると、このセリフはジュニョン役のアン・スンギュンによるアドリブらしい。出演者のひとりは「このセリフが本作のすべてを表しています」と評している。
あんたたち、絶対に生き延びて高3になって。ゾンビと高3のどっちが辛いか来年教えて。
ーーミジン(イ・ウンセム)
口が悪い上級生のミジンが、彼女なりに後輩たちを励ました言葉。ゾンビのほうが辛いに決まっているじゃないか、と思いがちだが、『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』などを観ると、韓国の受験地獄はゾンビ以上に辛いものなのかもしれない。
あなたのお父さんは、私たちの命の恩人よ。きっと、みんなも一生忘れないわ。大勢の記憶に残る人は、天国に行くの。
ーーハリ(ハ・スンリ)
アーチェリー部のキャプテン、ハリが父親を亡くしたオンジョを励ます言葉。身を呈して子供たちを守ったオンジョの父親は、子供たちにとって理想の親であり大人なのかもしれない。
オンジョ、今日は誰も死なない。
ーーチョンサン
チョンサンが進化したゾンビのグィナムに噛みつかれてしまった。驚き悲しむ仲間たちの前で、気丈に振る舞うチョンサン。「何も起きない」と自分やまわりに言い聞かせようとするオンジョに対しても、取り乱すことなく「今日は誰も死なない」と肯定してみせる。誰もが理不尽な死を遂げることのない“今日”が訪れるといいのに、と多くの人たちが思っているはずだ。
おい、出てこい。今日は僕が、この学校で一番幸せな男だ!
ーーチョンサン
飛び出していったチョンサンは、こう叫んでゾンビの群れを引きつける。オンジョに想いを伝え、受け入れてもらった。でも、二度と会うことはできない。幸せだけど悲しい叫びだ。
なお、チョンサンがゾンビになった場面と死ぬ場面が描かれていないため、続編が作られたら生存しているのではないかという噂も流れている。ファンの願いでもある。
いいえ、大人に何かを頼むことは、二度としません。だから、協力を望まないでください。
ーーオンジョ
学校から隣町に脱出し、多くの犠牲を払いながら、ようやく軍隊に救助されたオンジョたち。事情聴取をする軍人に対して、オンジョはきっぱりとこう言い放つ。
若者の大人たちに対する不信、弱者の強者に対する不信は根深い。不信をなくすには、大人(強者)が自分たちに都合の良い行動ばかりするのではなく、若者(弱者)のために行動しなければならない。
一緒にいなくても友達よ。でしょ? 違う?
ーーナムラ
もう一度友達とたき火をしたい、たき火を囲んで語り合いたいと言っていたナムラだが、進化したゾンビである自分の身を考え、仲間たちとは離れて行動していた。ゾンビの感染が落ち着いた後、オンジョたちと再会したナムラだったが、お互いの友情を確認した後、「やり残したことがある」と言って、おもむろに学校の屋上から飛び降りる。謎めいた彼女の行動は、続編へのプロローグなのだろうか?
■配信情報
『今、私たちの学校は…』
Netflixにて独占配信中
監督:イ・ジェギュ、キム・ナムス
脚本:チョン・ソンイル
出演:ユン・チャンヨン、パク・ジフ、チョ・イヒョン、パク・ソロモン、ユ・インス、イ・ユミ、イム・ジェヒョク