『野獣死すべし』を現代的な視点でドラマ化 ミステリー『ビースト・マスト・ダイ』の余韻

真のサスペンス『ビースト・マスト・ダイ』

 では邦題タイトルロールでもある「ナイジェル・ストレンジウェイズ」はどこへ行ったのだろう? 原作小説ではきっかり後半からの登場となる彼は、ここでは私立探偵ではなく新任の警部補だ。過去の出来事によって心に深い傷を負っており、自身のメンタルヘルスに苦しみながら持ち前の正義感で事件の真相に迫っていく。2018年の映画『追想』でのシアーシャ・ローナンとの共演が印象深いビリー・ハウルがストレンジウェイズに扮し、フランシスとの出会いによって変化していくさまを繊細に演じている。本作のストレンジウェイズはまだまだか弱い青年であり、いかにして自身を取り戻していくかが『ビースト・マスト・ダイ』のもう1つの大きな柱なのだ。続編制作も期待される本作は、“ストレンジウェイズシリーズ”のエピソード1と言っていいだろう。

ビースト・マスト・ダイ/警部補ストレンジウェイズ

 ハイスピードな展開とクリフハンガーが連続する昨今のTVシリーズに見慣れてしまうと、『ビースト・マスト・ダイ』の堅実なストーリーテリングはいささか華やかさに欠けるかもしれない。しかし、真のサスペンスとは、時に不可解な人間心理にこそある。正統派ハードボイルドミステリーならではの筆致は、憎悪渦巻く復讐劇の行く末に思いがけない余韻を与えてくれるはずだ。

■配信・放送情報
『ビースト・マスト・ダイ/警部補ストレンジウェイズ』(全6話)
【配信】スターチャンネルEX(https://ex.star-ch.jp/special_drama/mzjKr)にて独占配信中
【放送】BS10 スターチャンネルにて、3月9日(水)より毎週水曜23:00~ほか放送
    ※3月6日(日)13:00~第1話先行無料放送
企画・脚本・製作総指揮:ギャビー・チャッペ
監督:ドメ・カルコスキ
製作総指揮:ナサニエル・パーカー
原作:ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』(永井淳訳/ハヤカワ文庫)
出演:クシュ・ジャンボ、ジャレッド・ハリス、ビリー・ハウル、ジェラルディン・ジェームズ、ナサニエル・パーカー
原題:The Beast Must Die
(c)2021 BritBox, New Regency TV Productions Limited and Scott Free Films Limited. All rights reserved.
公式サイト:https://ex.star-ch.jp/special_drama/mzjKr

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる