『カムカム』虚無蔵は松重豊本人とも重なる 『孤独のグルメ』井之頭五郎との類似点も

松重豊、『カムカム』で見せた次世代への継承

 いつも通る地下鉄の駅に松重豊のポスターが貼ってある。まっすぐ前方を見据える表情は「テロをゼロへ」というコピーと合わさってインパクト十分。松重の知名度を生かし、テロ抑止を効果的に呼びかけている。また、1月20日には「ヨウジヤマモト プールオム」ショーにモデルとして登壇。モノトーンを基調とするファッションを着こなして話題となった。

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)に、松重は時代劇俳優の伴虚無蔵役で出演。虚無蔵はひなた(川栄李奈)を条映映画村に誘い、大部屋の先輩として文四郎(本郷奏多)の面倒を見る。虚無蔵の初見参はるい(深津絵里)編の第42話。初代「モモケン」桃山剣之介(尾上菊之助)の映画『棗黍之丞』シリーズに斬られ役として登場した。その後、初代モモケンの遺作『棗黍之丞 妖術七変化 隠れ里の決闘』の敵役に抜てきされ、二刀流の見事な太刀さばきを披露した。常に鍛錬を怠らず、話し口調は「拙者」、普段着も着物の虚無蔵はまさに侍のイメージそのもの。いかつい風貌に反して、監督の轟(土平どんぺい)や周囲からは「虚無さん」と呼ばれ親しまれている。

 松重の朝ドラ出演は2007年の『ちりとてちん』以来2度目。言わずと知れたバイプレイヤーの松重は、三谷幸喜の東京サンシャインボーイズや劇団「GEKISYA NINAGAWA STUDIO」を経て、1992年に黒沢清監督作『地獄の警備員』で主演を務めた。以降、映画やドラマ、舞台に数多く出演し、その姿を見ない日はないと言っていいほど。松重の出演作は無尽蔵にあるため、ここでそれらを追うことはしないが、『孤独のグルメ』(テレビ東京)の井之頭五郎に触れないわけにはいかないだろう。

 出世作となった同作で、個人輸入の雑貨商を営む五郎は、2人前、3人前を平気でたいらげる健啖ぶりと衰えない胃袋もさることながら、ユーモラスな言動が魅力だ。「これだよこれ、こういうのでいいんだよ」「俺はまるで人間火力発電所だ」など、心の声に思わずクスッと笑ってしまう。五郎の性格や仕事ぶりは実直で、当人としては食欲を満たしているだけなのだが、ふだんの様子とのギャップや表に出ない本音に共感し、知らぬ間に“飯テロ”に巻き込まれてしまうのだ。

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