『カムカム』本郷奏多が愛おしさ倍増キャラに 表情の機微で魅せる演出と過去への重なり
そもそも、五十嵐は蓋をあけてみたら本当に素直な男だ。東京から俳優になるため、身一つで夢を追って京都にやってきて、親の援助も借りず、ひたすら大きなスクリーンに映ることを夢みて血豆をこさえながら鍛錬に励む。ひなたにも、周りの人間にも何かをされたら「ありがとう」とお礼ができるし、行儀も良い。熱々の回転焼きへのこだわりも、ただの傍若無人な振る舞いかと思いきや、実は切ない理由があるし。
そんな彼が空腹のあまり道に倒れ、大月家の夕飯に招かれる。かつて、るい(深津絵里)と出かけていた錠一郎(オダギリジョー)が竹村夫妻にしてもらったこと、今度は彼らが五十嵐にしてあげている。その反復の演出にも、やはり胸がグッとくる。『カムカム』が親子3世代を描くドラマだからこそ地続きで繋がり、重なる行動や言葉の感慨深さが計り知れない。2人が映画に行っている時、錠一郎がるいに「何観に行ったの?」と聞くと、ニヤニヤしながらるいは『隠れ里の決闘』のポスターを指差す。
「何の巡り合わせやろうね?」
そう、人生はときどき、こんなふうに思わぬ巡り合わせが訪れることがある。まるでドラマのように。るいと錠一郎は、腹を空かせていい食いっぷりを見せる五十嵐に興味津々だ。夢追い人の彼は、トランペットで夢を追っていた錠一郎に重なる部分もある。2人は目の前の若人らを見て、かつての自分たちに重ねてみたかもしれない。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK