新川優愛に新境地の予感　『カムカムエヴリバディ』と『愛しい嘘』で正反対の演技

　そうした大人路線を進んでいる中で、『カムカムエヴリバディ』の藤井小夜子役はこれまでの強さを削ぎ落とした、全く真逆な女性を演じている。小夜子は、川栄李奈演じる3代目ヒロイン・大月ひなたの同級生で、お嬢さん育ちでおしとやかな優等生。子どもの頃からメガネをかけ、英語にピアノ、習字を習い、大学進学を考え将来は先生になることを決めているという役どころ。ひなたは正義感が強く社交的だが、地道が努力が苦手で勉強ができず、進路も決められないという性格。小夜子は対照的な存在としての立ち位置で、ひなたがやり残した夏休みの宿題を助けたり、一緒に映画村に付き合ったり、大きくなってもひなたを支える親友の1人となる。

　新川は川栄と同じく高校3年生になってからの登場で、幼少期を演じた竹野谷咲からのキャラそのままを演技で見せている。上品さを意識していると本人も語っているが（参照：新川優愛、朝ドラ出演の喜び語る　「『ドッキリかな!?』という感じもありました（笑）」）、これまでのイメージをリセットしたような柔らかい演技で、勢いよく来るひなたの全てを受け止め、何よりそこにいるだけで安心感がある、親友役としての役割を十分に応えている。現在は18歳の役だが、今後は実年齢よりも上の世代を演じると予想され、教師の夢を実現させるのか、大人になった演技にも注目したい。

　同時期に、友達の成功を妬む女性と成功を願う女性という正反対の役柄を演じ、それぞれ魅力的な演技で全く違う印象を与える演技の幅は正直驚かされる。とりわけ『カムカムエヴリバディ』での素朴な優等生役という新川の中でも珍しい役柄は新境地とも言える。現在は28歳だが、コワモテ俳優だった松重豊が『孤独のグルメ』（テレビ東京系）でイメージが変わったように、30代は力の抜けた自然体のいい役者になっていきそうな予感が漂っている。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演：上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本：藤本有紀
制作統括：堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽：金子隆博
主題歌：AI「アルデバラン」
プロデューサー：葛西勇也・橋本果奈
演出：安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか　
写真提供＝NHK