キム・テリとナム・ジュヒョクが好演の『二十五、二十一』 コロナ禍に刺さる悩みと言葉
夢を諦めきれないヒドは方法もわからないまま突き進み、危険な目に遭いそうになったところをイジンが助けてくれた。しかも、何が間違っているか、何が危険なのかを教えてくれただけでなく、ヒドの意志を肯定してくれたのだ。18歳のヒドにとって何が正しいかは重要ではない。自分を認めてくれる大人が必要なのだ。一方、イジンがヒドから教わった“失ったことよりも得ること”に目を向けて生きる姿勢は、私たちの時代にも深く突き刺さる。
イジンは父親の倒産した会社の社員に押しかけられた夜、「どんな瞬間でも絶対に幸せになりません」と彼らに誓った。何もかも失ったイジンが補償できるのは自分の不幸だなんて、言葉を失う。『まぶしくて ー私たちの輝く時間ー』でイ・ジュナ役の時もそうだった。明るい未来を描いていたはずが、抗えない運命のせいでどこまでも落ちていく青年。同情できないくらい残酷な状況にいるナム・ジュヒョクの演技は圧倒的に目を引くものがある。
イジンはヒドを見ると「18歳の自分を思い出す」と言った。だから、昔の自分を慰めるようにヒドを励まし、見守ってしまうのだろう。「これが私の大きな夢だ」と自信を持って語り、大声で泣いたり笑ったりするヒドを羨ましそうに見つめるのは、夢を語れず隠れて泣くこともできない自分がいるから。だからこそ、あの時の悩みさえも恋しくなってしまうのだろう。
あの夜、ヒドが訪ねてこなかったらイジンはどうなっていただろうか。ヒドは水道の蛇口を上向きにして噴水のように水を出して見せた。まるで、イジンの傷を洗い流すかのように。それを見て、1つじゃ足りないと全部の蛇口を開けたイジン。ヒドはスケールが違うと喜んでいたが、勢いよくあふれ出す水はきっと大泣きしたかったイジンの涙の象徴だ。幸せにならないと誓った青年に、一緒にいる時はこっそり幸せな時間を過ごそうと秘密を共有することにした少女。これから何かが始まりそうな、夏真っ盛りの夜。ヒドとイジンが迎える明日が待ち遠しい。
■配信情報
『二十五、二十一』
Netflixにて独占配信中(毎週土・日曜に新着エピソード配信)
原作・制作:チョン・ジヒョン、クォン・ドウン
出演:キム・テリ、ナム・ジュヒョク、キム・ジヨン、チェ・ヒョンウク、イ・ジュミョン