大ヒット『スパイダーマンNWH』はひとときの奇跡に? コロナ禍で固まった映画興行の傾向

『スパイダーマンNWH』はひとときの奇跡?

 唯一、ファミリームービーの『SING/シング:ネクストステージ』は5週目で1億2841万ドルという好調ぶりをキープしているが、もともと同作は3892館という公開規模。スタジオ側の肝いりであることは明らかだったといえる。

 この傾向が覆されるのはいつになることか。2月18日には『スパイダーマン』シリーズでおなじみトム・ホランドが主演するアクション映画『アンチャーテッド』が日米同時公開となるが、こちらは規模としては『スパイダーマン』よりも小さめになるものとみられる。冒頭に触れたとおり、オミクロン株をめぐる情勢の変化も重要ではあるが、『アンチャーテッド』はまたひとつ興行の動向を占う1作となるだろう。

『アンチャーテッド』

 ところで毎週お届けしている本稿には、日本での公開が決まっていない作品をご紹介するという意図もある。全体として好調とはいえない北米興行だが、今週末もふたつの新作がトップ10にランクインした。

 ひとつは第4位の恋愛歴史映画『Redeeming Love(原題)』で、1850年代のゴールドラッシュを背景に、子どものころから売春を強要されてきた女性・エンジェルが、マイケル・ホセアという男に出会い、愛情によって傷を癒していく物語。アビゲイル・コーウェンとトム・ルイスが主演を、監督を『トリプルX 再起動』(2017年)などのD・J・カルーソが務めた。米Rotten Tomatoesでは批評家スコア11%、観客スコア95%という評価の割れっぷりもポイントだ。

 第8位の『The King’s Daughter(原題)』は、『007』5代目ボンド俳優のピアース・ブロスナンと『メイズ・ランナー』シリーズのカヤ・スコデラリオという異色の組み合わせによるファンタジー・アクション。ブロスナン演じるルイ16世が、自ら不死を求めて人魚の“生命の源”を手に入れようとするが、私生児である娘(カヤ・スコデラリオ)の存在によって事態は一変していく。こちらもRotten Tomatoesでは批評家24%、観客86%という評価だが、問題は2170館で75万ドルという非常に厳しい興行収入だろう。

 そのほか、今週の注目点は第10位の『リコリス・ピザ』が9週目にして1000万ドルを突破したことと、先週大きなトピックとしてご紹介した『竜とそばかすの姫』(2021年)が2週目で第12位となったことだ。前週比−64.9%の55万ドルを稼ぎ、累計興収は274万ドルとなっている。

北米映画興行ランキング(1月21日〜23日)

1.『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
1412万ドル/3705館/累計7億2101万ドル/6週/ソニー

2.『Scream(原題)』
1240万ドル/3666館/累計5134万ドル/2週/パラマウント

3.『SING/シング:ネクストステージ』
571万ドル/3434館/累計1億2841万ドル/5週/ユニバーサル

4.『Redeeming Love(原題)』
371万ドル/1903館/累計371万ドル/1週/ユニバーサル

5.『キングスマン:ファースト・エージェント』
177万ドル/2360館/累計3151万ドル/5週/20世紀スタジオ

6.『355』
160万ドル/2609館/累計1108万ドル/3週/ユニバーサル

7.『American Underdog(原題)』
122万ドル/2164館/累計2313万ドル/5週/ライオンズゲート

8.『The King’s Daughter(原題)』
75万ドル/2170館/累計75万ドル/1週/Gravitas Ventures

9.『ウエスト・サイド・ストーリー』
69万ドル/1290館/累計3505万ドル/7週/20世紀スタジオ

10.『リコリス・ピザ』
68万ドル/772館/累計1078万ドル/9週/UAR

(※本記事の興行収入データは1月24日未明時点の速報値であり、最終確定の数値とはや
や誤差が生じる可能性があります)

参照

https://www.boxofficemojo.com/weekend/2022W03/
‘Spider-Man’ Leads Quiet Box Office Weekend As Domestic Cume Grows To $721M+; Can The Superhero Take Down ‘Avatar’? – Sunday Update
‘Spider-Man: No Way Home’ Zips To No. 6 On All-Time Global Chart With $1.69B – International Box Office

■公開情報
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
全国公開中
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ、ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題:Spider-Man: No Way Home
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