石田明×小野塚勇人が語り合う、“無言”の笑い 「制限された中で楽しむために」
NON STYLE 石田明が構想から4年をかけた、オリジナル脚本・演出を手がける舞台『結 -MUSUBI-』が、2月4日より東京、2月11日より大阪にて上演される。「相撲部屋」を舞台とした本作は、今までにない、“しゃべらないけどうるさい”感覚で観客を虜にする。主演を務めるのは、劇団EXILEの小野塚勇人。稽古の開始前に(2021年12月某日)、石田と小野塚に意気込みを聞いた。(編集部)
石田「無言でどんだけ遊べるか」
――2人が顔合わせして今日で会うのは何度目ですか?
石田明(以下、石田):4回か5回目ですね。オーディションに来てもらったのが最初です。小野塚くんは、なんかいい感じの、地元の“ちょいワル”の人気もので、お祭りが楽しみって感じの雰囲気もあったので、この物語に持ってこいかなと思いました。
小野塚勇人(以下、小野塚):オーディションにはありのままを持って行くしかないって思って、変に格好つけたり、よく見せようとしないで、素直な感じで臨みました。
石田:やっぱり最初の頃は、半ニヤケ状態っていうか(笑)。口角は上がってるけど、そこまで心を開いてない感じもあったんですよ。でも、会う回数を重ねるうちに、笑顔がすごくいい感じになってきて。だんだん、演じる役の人物像に合ってきて、小野塚くんを選んで間違いなかったなと思いました。
小野塚:最初は半ニヤケだったのかって言われると(笑)、まあ戸惑いもあったと思うんですけど、今は石田さんとは距離も近くなってきてると思います。年明けてからは共演者の方とも顔を合わせる機会も増えていくので、コミュニケーションをとって楽しくやっていきたいなと思ってます。
石田:ここ2週間くらいでいうと、(相方の)井上よりも喋ったんちゃうかなと(笑)。共通の友達がいることもわかったし、こうやって一緒に取材を受けたりしたんで、ほんまに他愛のない話を重ねて、いい関係性になってきてます。今でこんないい感じなので、稽古始まったら、もっといい感じになるのかなと。
――役についてもお聞きしたいんですが、小野塚さんは現時点ではどのようなイメージを持たれてますか?
小野塚:イメージはできているんですけど、今回はノンバーバルなので難しいですね。普段のセリフがある台本のときは、どう表現したり、仕掛けていこうかなということを考えるんですけど、今回は“動き”なのでどうしようっていう。石田さんの演出のスタイルもこれからわかるので。
石田:台本を使っての稽古をするまではすごい楽しみで、その前に、無言でどんだけ遊べるかってことからスタートしようと思ってます。
――役の関係性については?
石田:僕に関しては完全に黒子なんですよ。でも後半にトラブルが起こって、また違う展開もあるのかなと思います。
小野塚:僕は4兄弟いる中の末っ子ですね。力士を目指しているんですよ。
石田:目指してるのに、4兄弟全員が太れないんです。相撲に愛はあるのにね。
小野塚:本当に愛嬌のあるキャラクターだと思いますよ。4兄弟みんな愛嬌あって、でもそれぞれがぜんぜん違うキャラクターなので、そこの化学反応があればいいなと。僕の役はなんでもありなので、その分、いろんなものを用意しとかないといけないし、それがその場で出せるかっていうのも瞬発力だと思うので、そこで生まれるものを大事にしたいですね。
小野塚「ガンガンに滑っていこうと思います(笑)」
――台本は現時点でできあがってるんですか?
石田:書き終わってるんですけど、稽古で進化していくと思うし、役者のみんなそれぞれの感覚で台本を作っていく感じになるのかなとは思います。ト書きオンリーで書いています。
――ト書きオンリーの台本を読んだ感想は?
小野塚:イメージはできるんですけど、文字で書かれたものを、笑いにするときに、やっぱり相手もいるし、その場で生まれるものもあると思うので、まだどうなるのかわからないし、それが楽しみですね。面白そうな動きとかもいっぱいあって、結構どんどん試していって、まあガンガンに滑っていこうと思います(笑)。
石田:滑った上でヘラヘラしてる時間が一番楽しいんですよ。滑ったときに人間ってやたらと喋って埋めようとするもんですけど、今回はその埋める作業ができひんっていうのが滑稽なんですよね。なので「お滑り」大歓迎ということで。言葉がないってすごい面白いことで、滑ったあとに、お互いで4秒くらい見つめあったら、おもろいじゃないですか。「助けてくれ!」「ほんますみません」みたいな。そういうエネルギーのやりとりみたいなものが、見せられたらいいなと。お客さんも集中するでしょうし。セリフがないから1秒でも見逃さずにいようと思うし、小さい動きにもヒントを求めるので。
――石田さんは、これまでにもノンバーバルなものを何かでやったことがあるんですか?
石田:10分くらいのショートムービーを作ったことがあるんです。そのときの反省点もあって。なんとなく、ノンバーバルって海外のもんでしょう? くらいに思ってたので、日本人っぽくないことをやってもうたなって。やっぱり、日本の特有のリアクションってあると思うんで、今回はそこを意識して作っていこうと思います。
――小野塚さんは、これまでにノンバーバルでお芝居をするという経験は?
小野塚:ありません。喋り倒してきたんで。舞台ってセリフを喋ってるときは楽で、逆に無言の時の居方とかに、その役を生きれているかってことが表れるものだと思うんです。もう今回は、喋らないということで、ずっと動きがあって気力、体力がいるし、滑ったときのことも考えても、精神力も必要かなって思いますね。
石田:街中におって、ちょっと面白い人がいたときに、一緒に居る人にそれを伝えたいけど、言葉で言えへんってことあるじゃないですか。そういう空気の連続をみんなで作れたらいいなと思います。共演者もそうだし、お客さんも含めて、全員が共犯になって、その空気を見つけていくことができたらと思います。