東島京が“表現者”であり続けるために目指すものとは? 舞台愛炸裂のロングインタビュー

東島京、“表現者”であり続けるために

 2021年に日英合作ミュージカル『GALAXY TRAIN』で初めて舞台に出演して以来、数多くの話題作に出演し、注目を集めている東島京。2025年11月に初の単独イベントを開催するほか、10月には根本宗子作・演出の舞台『Marriage Hunting』英語版への出演、12月にはアミューズ所属俳優のユニットである“チーム・ハンサム!”の20周年記念したライブ『20th Anniversary ULTRA HANDSOME LIVE 2025 “ZERO”』が控えている。表現者としての幅を広げている東島にインタビューを行った。

「自分の心が感じるものを大事にする」

――2025年は『ワイルド・グレイ』『チョコレート・アンダーグラウンド』『四月は君の嘘』と毛色の違うミュージカルへの出演が続いています。それぞれの現場で感じたご自身の成長、変化はありますか?

東島京(以下、東島):今年はお稽古と本番を数多く経験させていただき、ずっと何かしらの作品と役のことを考える日々です。それこそ僕という人間が毎日のように変わっていった気がします。『ワイルド・グレイ』は初めての3人芝居。僕自身は急遽代役として出演が決まったので、とにかく焦っていました。難しい題材の中、演出家の根本宗子さんの世界観や言葉をどう操るかという挑戦でした。演じたアルフレッド・ダグラス(ボジー)は感情の起伏が激しくて、急に癇癪を起こしたり、人を試すような言葉を発したり。理解が難しい役でしたが、本番まで時間がなかったので、資料を読んだり、その時代の作品を観たり、アルフレッド・ダグラスという人物を調べたりして、わかることを片っ端から頭に入れていきました。その中で自分との共通点を見つけて、小さなきっかけから手繰り寄せていくような感覚でした。でも、その焦りや必死さがボジーという人物とうまく共鳴した気がしています。『チョコレート・アンダーグラウンド』もイギリスのお話ですが、雰囲気がガラッと変わって、ポップに見える裏に大きなメッセージがある作品でした。政治などの話もありますが、それ以上に「好きなものがなくなったら嫌だから立ち上がる」という少年たちの純粋な気持ちが描かれていて。大人になると、責任やプライドの重みで、好きなものを好きと言いづらくなったり、自分の心のままに行動するのが難しくなったりすると感じます。でも、自分の心が感じるものを大事にするのは素敵だと思ったし、改めてそのことに気付かせていただいて嬉しかったです。

ーー『四月は君の嘘』はいかがでしょうか?

東島:『四月は君の嘘』の有馬公生という役は、僕とリンクするものが多かった気がします。すごく繊細で、人を傷付けるのが嫌だから自分の感情を殺してしまう子なのですが、ある日限界が来て、母親に酷いことを言ってしまい、それが母と交わした最後の言葉になってしまう。公生は「お母さんを喜ばせたい」「もっと近くに感じたい」気持ちでピアノを始めたと思うのですが、ピアノは自分から大切な人を遠ざけてしまうようなものになって。「自分は生きていていい」と思うために音楽から遠ざかっていたのに、無理やり心を開いて一歩踏み出させてくれる宮園かをりという存在に出会います。僕自身、心の傷や音楽と向き合っちゃダメだと思っていた時期があったので、なおさら共感しました。作品の主人公は、周りから影響を受けて成長していく姿をお客様に見せる役割を持っているような気がします。でも、同じような傷や罪の意識を抱えている人に「その性格なら変われるじゃん。大丈夫だよ」と思わせてしまったら置いてけぼりにしてしまうし、寂しい気持ちにしてしまうと思いました。だから、演じ方やセリフの言い回しをすごく考えました。観てくださった皆さんの中には、公生が小さな一歩にもならないくらいしか進んでいないように感じた方もいると思います。でも、同じような傷を抱えた方には、勇気を与えられたんじゃないかとも思います。踏み出した一歩よりも、「怖いけど覚悟を決めて前に進もう」という気持ちが大事な気がしますし、それをお客様に届けられたなら、僕はこの役を全うできたと思える気がします。日々お客様からいただくメッセージやお手紙、カーテンコールでいただく拍手やスタンディングオベーションから、「皆さんに届いたのかな?」と思えて、すごく嬉しくて感動しました。

――『四月は君の嘘』は、どこか前向きでいろいろ考えたくなる終わり方だったので、演じる際のこだわりを聞いてすごく腑に落ちました。

東島:切ないお話ですが、観終えたときに温かい気持ちになってほしいと思っています。悲しいけど、今という瞬間がどれだけ輝いているか、何気ない毎日に隣で笑ってくれる人がいることのありがたさみたいなものを感じていただけるような作品になったと思います。観てくださった方が、劇場を出た後、大切な人に「いつもありがとう」と伝えたくなるような、背中を押せるような作品になっていたら嬉しいです。

『四月は君の嘘』はすごく大切な成長の1ページ

――『四月は君の嘘』で若手が多いカンパニーの座長を務めて学んだことなどはありますか?

東島:『春のめざめ』で初めて座長をやらせていただいてから2回目ですが、こんなに大人数のカンパニーの座長は初めてです。役を演じる上で、役同士の関係性を大切にしていて、稽古場でもその役に近い性格になることが多いんです。結構人見知りするのですが、演じる役が明るかったら無理にでも明るく振る舞ったり、逆にクールな役だと稽古場でもあまり話さなかったりとか。公生はあまり自分からコミュニケーションをとらないので、明るく絡みにいくことはしませんでした。一度、Wキャストの(岡宮)来夢くんとサウナに行って、19時くらいから深夜1時くらいまで話をしました。そのときに思い切ってお互いWキャストが苦手だということも話したんです。役者は皆さんそうだと思うのですが、相手に負けたくない気持ちや嫉妬心があるんです。でも、お互いにそれを話したことで、考えていることなどを素直に伝えられるようになって、それまで以上に近い関係になることができました。その上で、来夢くんは僕よりたくさん座長を経験されているので、「京は今後いろいろな座長を経験していくと思うから」と、役や作品と向き合うのとは別に、座長としてのアドバイスをくださりました。具体的に言うと、キャストだけでなく音響さんや照明さん、みんなが「この人を支えたい」と思うようなあり方や振る舞い方を教えてくれました。そこから自分の中で稽古場でのあり方みたいなものが変わりました。皆さんに伝わっているかはわからなかったのですが、ある日の本番後、アンサンブルのボーカルキャプテン・中野太一くんが僕のところに来て、後半のある場面について、「京があのシーンをやる時、アンサンブルの声が格段に良くなるんだよね」と言ってくださったんです。伝わったのかなとか、皆さんが僕のために気持ちを一つにしてくださったのかなと思えて、すごく大切な成長の1ページになりました。この作品に関わる全ての方に心から感謝していますし、自分の中で大きく成長できた作品になったと思います。

――10月には根本宗子さん作・演出の舞台『Marriage Hunting』に出演されます。ご自身初の2人芝居、久しぶりの英語でのお芝居ですが、楽しみなことはありますか?

東島:全部不安で、全部楽しみです(笑)。『ワイルド・グレイ』以来また根本さんとご一緒できるのが嬉しいですし、ご縁が繋がっていくのはすごくありがたいです。根本さんの世界観というか言葉はどこか浮遊感があって、それを英語で表現するのは新たな挑戦だと感じます。 2023年にロンドンで上演し、現地の役者の皆さんと全編英語でお芝居をした『GALAXY TRAIN - A New Musical』はミュージカルでしたが、今回は“高速会話劇”。日本語・英語・韓国語の3バージョンを同じ稽古場で同じ時間にやることもあるようなので、自分がやるのも他2つのお稽古を見るのもすごく楽しみです。あと、登場人物がたくさんいると流されていた役の人間性みたいなところも顕になってくるので、役作りにおいては人物の感情や人となりをより丁寧に深掘りしたいと思っています。

――過去公演の映像や今回の台本などで作品に触れていたら、本作の魅力、英語版の面白みなどを教えてください。

東島:日本語版を観たときは、根本さんの世界観が本当に面白いなと思いました。言葉にするのが難しいのですが、会話のキャッチボールのテンポやキャラクター性がリアルでありながらも独特な感覚。この作品は、2人の男女が結婚相談所の相談員と相談しに来た人を交互に演じ、時間軸もいろいろと変わっていきます。ストーリーとしても面白いけど、日本語でも難しい作品を英語でやるわけなので、ハードルが高いと思います。でも、普段お芝居をしたり映画を観たりしていて感じるのですが、英語は日本語より言葉の表情みたいなものが大きいんです。英語はセリフの音程みたいなものが多彩で、それが如実に表れるミュージカル作品は派手なキャラクターや外国をモデルにしたものが多いので、日本語で演じる時は違和感がないように大袈裟に音を変えたり、普段の生活とは違うテンションで話したりしています。英語だとそこは自然に表現できるんじゃないかと思いますが、日本語に比べると僕の引き出しが少ないので、稽古期間中は今まで以上にたくさんの作品に触れて引き出しを増やし、いろいろ試したいです。観てくださるお客様も、日本語のお芝居とはちょっと違う雰囲気を味わっていただけると思います。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる