一風変わった飯テロドラマ 『失恋めし』は新たな明日に向かうための勇気をくれる

全人類にお薦めしたい『失恋めし』

 物語自体も、連載中のエッセイ漫画を描くために「失恋ネタ」を必死で探すミキが「街で見つけた失恋とその傷ついた心を癒す美味しいめしの物語」ではあるが、必ずしも実際に盗み聞いた会話をそのまま漫画にしているわけではない。彼らのその後のやり取りを想像したり、「こうだったらいいな」という願望で補完したり、彼らのやりとりの中の重要なフレーズはそのままに、漫画家・キミマルミキ独自の視点によって、時には彼女の日常が織り込まれ、ふんわりまぁるい円を描くように、柔らかい世界が構築されていく。オープニングが、現実世界と漫画の世界をぴょんと気軽に横断し、闊歩するミキの姿であるように、フィクションとノンフィクションの境目が曖昧で、核となる「美味しい」と「傷ついた心に寄り添ってくれる誰かの優しさ」は本物。全くもって、物語と現実の配分が絶妙だ。

失恋めし

 ここには様々な「失恋」がある。サバを共にした恋、女子高生たちの恋と友情、推しへの恋、恋に恋する恋、路上シンガーの道行く人々への片想い。失恋だけじゃなくて、ちゃんと現在進行形の恋もある。特に、ミキと花屋の青年(井之脇海)の不器用すぎる恋の進展は、微笑ましすぎて、応援せずにはいられない。「恋は主張するから見つけやすい。失恋は慎み深くて見つけにくい」という台詞があるが、このドラマはそんな、「慎み深い密やかな恋」を探して、拾って、そっと寄り添う物語だ。縁結びの神社で「いい失恋に巡り合えますように」と願ったり、ちょうどいいタイミングで失恋していると思しき人を見つけたら内心大喜びしたりするヒロインはなんだか調子がよくて、それもちょっと笑ってしまうけれど。

 「あの客は失恋の匂いがしないな。あいつは満たされてやがる」とミキが花屋の客を観察しながら1人呟く場面がある。満たされていない心を満たすのが「失恋めし」であるなら、私たちのちょっと擦り減った心を満たしてくれて、終わった恋に折り合いをつけ、いや、終わった恋を愛おしく胸に抱いたまま、新たな明日に向かうための勇気をくれるのが、ドラマ『失恋めし』なのである。

■配信・放送情報
『失恋めし』(全10話)
Amazon Prime Videoにて、1月14日(金)一挙独占配信
読売テレビにて、7月放送予定
出演:広瀬アリス、井之脇海、村杉蝉之介、臼田あさ美、安藤ニコ、若林拓也
原案:木丸みさき『失恋めし』(KADOKAWA刊)
脚本:今井雅子
監督:大九明子
音楽:髙野正樹
主題歌:Homecomings「アルペジオ」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
チーフプロデューサー:前西和成
企画・プロデュース:田中雅博
プロデューサー:伊藤太一(AOI Pro.)、長汐祐人(AOI Pro.)
共同プロデューサー:熊谷喜一(ヘッドクォーター)
制作協力:ヘッドクォーター
制作プロダクション:AOI Pro.
制作著作:読売テレビ
(c)木丸みさき・KADOKAWA/ytv
公式サイト:ytv.co.jp/shitsurenmeshi/
公式Twitter:@shitsurenmeshi(twitter.com/shitsurenmeshi)
公式Instagram:@shitsuren_meshi(www.instagram.com/shitsuren_meshi)

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