笠松将主演『リング・ワンダリング』新場面写真公開 瀬々敬久、宮台真司らのコメントも
2月19日に公開される笠松将主演映画『リング・ワンダリング』の新場面写真が公開された。
本作は、『アルビノの木』で北京国際映画祭など世界各国の映画祭でノミネート上映され、グランプリ含む20の賞を受賞した金子雅和監督のオリジナル新作長編。自然と人間の関係性を描いてきた金子監督が、はじめて東京を舞台に、町や人々の記憶と対峙した物語を撮りあげた。
物語の舞台は東京の下町。漫画家を目指す青年・草介が、不思議な娘・ミドリを図らずも怪我させたことから、彼女の家族が営む写真館まで送り届けることになり、その家族との出会いを通じて、東京という土地に眠る過去の記憶を知ることとなる。
主人公・草介を笠松、ヒロイン・ミドリと草介が描く漫画のヒロイン・梢を阿部純子が演じるほか、安田顕、片岡礼子、長谷川初範、田中要次、品川徹がキャストに名を連ねた。
公開された場面写真は、草介(笠松将)が黄金色に輝く草原で神妙な面持ちで佇むカットや、涙を浮かべ正面を見据えるミドリ(阿部純子)のカットなど、二人が織りなす物語の様子が切り取られている。また、草介が描く漫画の登場人物である銀三(長谷川初範)が、巨大な滝を見上げるカットも公開され、現実と虚構が入り混じる作品の世界観がうかがえる。
さらに、本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開。作家の乙一は、「妖しく美しい怪異譚! 猟師が獲物を狙い撃つ様は、カメラマンが被写体にレンズを向けてシャッターを切る様を想像させる。それは自然界から芸術を切り抜こうとする監督自身の姿なのかもしれない」と賛辞を送る。『水鏡綺譚』『高丘親王航海記』などで知られる漫画家の近藤ようこは、「この青年の将来がどうなるかはわからないが、描くという行為と自分の人生が、一生に一度でもリンクすることがあるならば、それは漫画を描く者として幸福だ」と漫画家志望の主人公・草介に触れ、絶賛。前東京国際映画祭ディレクターの矢田部吉彦は、「1作に映画数本分の刺激が満ちている。ナチュラルで、スピリチュアルで、ドラマチック」、金子を映画美学校で指導した映画監督の瀬々敬久は、「静かな語り口だが描かれるのは大きな物語だ。」と述べているほか、暉峻創三、占部房子、ステファン・ラウディン、ダニエル・アギラル、ベンジャミン・イリォスら国内外の映画祭関係者からのコメントが公開された。
近藤、乙一ほか14組によるコメントの全文は、以下の通り。
コメント
近藤ようこ(漫画家)
この青年の将来がどうなるかはわからないが、描くという行為と自分の人生が、一生に一度でもリンクすることがあるならば、それは漫画を描く者として幸福だ。
乙一(作家)
妖しく美しい怪異譚!猟師が獲物を狙い撃つ様は、カメラマンが被写体にレンズを向けてシャッターを切る様を想像させる。それは自然界から芸術を切り抜こうとする監督自身の姿なのかもしれない。
瀬々敬久(映画監督)
三つの時間、時空を超えた恋愛、戦争への反対声明。静かな語り口だが描かれるのは大きな物語だ。それでいて間違いなく今を撃っている。金子雅和の現在進行形の到達点であり、そして何より阿部純子の永遠性が素晴らしい。
占部房子(俳優)
子どもの頃、黄金色の大地に寝転んで自分の身体の中にある生まれる前の記憶と対話した事がある。だれにも邪魔をされない平和で孤独な創造の世界。「リング・ワンダリング」との出会いは私の記憶と結びつき、豊かな景色と共に、進むべき未來へ導いてくれました。
ありがとう。忘れてた。忘れてはいけないものを私は忘れていたのです。
ヴィヴィアン佐藤 (ドラァグクイーン/美術家)
草介を演じる笠松将が秀逸だ。写真はじめ、様々な痕跡を巡る旅路は、笠松の相貌へと収斂させる。出来事や歴史は直接描写されず、最終的に笠松の表情という痕跡は、彼の役者としての成長の徴として刻まれた。
宮台真司(社会学者/映画批評家)
幾つかの視座が交叉する。
過去の視座と現在の視座。
人の視座と動物や森の視座。
それらの視座が円環をなす。
そして私は世界に開かれる。
映画は超越的感受性が失われたと嘆く。それをニホンオオカミの絶滅に重ねる。時空を超えて出会ったミドリもそうだ。ミドリ演じる阿部純子の芝居が絶品だ。未規定性を享楽する笠松将も凄く良い。
山口晃(画家)
端正な劇中画。特殊な描画法は版画の如く直接性を弱め、絵と二重写しの像を生む。
映画初見。物語から、映像から突然に引き剥がされ何かを見る瞬間がある。
ストーリーを知らぬ身が映画を踏み惑い一度きり出会う『映画の幽霊』。
金原由佳(映画ジャーナリスト)
オオカミとは何ぞや。オオカミの存在で循環の輪が切れてしまった生態系の形の中で、私たちがその断裂をつなぎ合わせることが出来るのか。その可能性を想像してみること。草介の身に起きるオオカミとの邂逅をいつか自分自身の体験として実感してみたい。
暉峻創三(映画評論家/大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)
個々の画面が写しとるのは、小さな範囲の簡素なものに過ぎない。けれど、秀逸な音響、美術設計と創造的な脚本の力で、時空間の軸上に現実を超えた広大で深遠な世界が構築されていく。これぞ金子雅和映画のマジックだ。
矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)
時空を超えたり、劇中マンガの物語に出入りしたり、幾層もの世界に誘ってくれて、1作に映画数本分の刺激が満ちている。ナチュラルで、スピリチュアルで、ドラマチック。鮮やかなエンディングにも脱帽!
ベンジャミン・イリォス(カンヌ国際映画祭 監督週間)
この映画は、冒頭から崇高なラストショットまで、我々に魔法をかける。それは感動的な詩情とマジックリアリズムの感覚を持ち、シンプルな作りは古典的風格だ。そして俳優たちの演技には、物語を実現するための確かな技術と繊細さがある。
ダニエル・アギラル(日本映画史家/サン・セバスティアン国際映画祭)
自然に在する精霊を感知できる能力が失われている時世だからこそ、金子監督の豊潤な原色の写真に染み込まれる体験をお薦めしたい。
ステファン・ラウディン(ワルシャワ国際映画祭 フェスティバルディレクター)
物語に感動し、泣き笑いする時、私たちは映画の素晴らしさを感じます。また、映画を観ていると、私たちはある種の魔法の目撃者となることがあります。映画の魔法。それは素晴らしく、しかし稀にしかできない体験です。そして『リング・ワンダリング』には、その全てが備わっているのです。
ラフシャーン・バニー・エッテマード(映画監督)、シーロ・ゲーラ(映画監督)ほか、第52回インド国際映画祭 審査委員一同
『リング・ワンダリング』は、現代の日本社会に木霊する過去からの残響を映し出し、幻想と漫画と現実の織り交ざりを美しい画作りで表現する。この映画では、複雑で多面的な日本の苦悩に満ちた過去の傷の物語が、演出と演技によって非常に繊細に描かれ、心躍るような体験となっている。戦時中の記憶を蘇らせようとしているが、本作は戦争映画ではない。むしろ人間同士の関係を軸としながら、理解出来る限界を超えたものへの思索を、我々に促しているのだ。
■公開情報
『リング・ワンダリング』
2月19日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国公開
出演:笠松将、阿部純子、片岡礼子、品川徹、田中要次、安田顕、長谷川初範
監督:金子雅和
脚本:金子雅和、吉村元希
劇中漫画:森泉岳土
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
2021年/日本/カラー/5.1ch/1:1.85/DCP/103分
(c)2021 リング・ワンダリング製作委員会
公式サイト:ringwandering.com
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