「笠松将、映画を描く」第7回『岸辺露伴は動かない』 高橋一生さんから教わった大切なこと

笠松将が高橋一生から教わった大切なこと

 映画・ドラマに活躍の場を広げ続ける俳優・笠松将。2021年は注目の作品に出演し続け、12月には大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第40回、第41回(最終回)に栄一(吉沢亮)の孫・敬三として重要な役割を担い、スペシャルドラマ『岸辺露伴は動かない』第4話「ザ・ラン」では、高橋一生と見事にわたりあった。笠松将は映画やドラマ、共演する俳優たちを通して、何を思い、何を考えたのか。オリジナルイラストと共に彼の深層に迫っていく(編集部)。

 皆さん、ごきげんよう。お久しぶりです。連載とは名ばかり、『超』不定期連載。

 笠松将の映画を書く、ついに筆をとり、『岸辺露伴は動かない』について書いていこうと思います。待ちに待ってくれた行儀正しい諸君と、リアルサウンド石井さんには頭が上がりません。原稿もなかなか出来上がりません。テンションももちろんです。

 まー言ってても始まらないんで、筆取って、キーボードを叩いていこうかしら。

 さぁ、始まりです。

 『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)にお声掛けいただき、冗談抜きで演じられるか、ずっとためらいがあります。でもなぜか、放送されてました。作品とは不思議なものですね。

 今回はその、岸辺露伴の現場での色んな話をしようかなと思います。「映画を描くんじゃないのかよっ!」そんな声が聞こえてきそうですが、そんなこと気にしてたら何にもできやしない。きっと前向きになれると思うよ。

 高橋一生さんとは、はじめましてで、とても細かい気遣いをしてくださる方だったなぁ。撮影の合間にもたくさんお話をさせてもらったし、色んな話を聞いてくれたんですよね。それにお芝居もとっても魅力的でしたよね。あの声についてずっと考えています。何か少しでも違えば、きっと気持ちの悪い違和感になるようなお芝居を、針の穴を通すように繊細に、ピンポイントで抑えている感じが職人だったなぁ。声の話をしたのは一例であって。それだけ台本とか、自分の役とか共演者とか、作品とか、色んなものに向き合った結果、そういう細かいことは付属品としてついてくるんだと確信しました。色んなことに意識をもっていかれそうになるけど、一番大切なことにしっかり向き合うことが大切なんだと、本質的なことを教わった気がしています。

 それともう一つ、この作品の監督である渡辺一貴さん。

 今作についての打ち合わせで初めてお会いしたとき、この原作がいかに面白くて、自分がどれだけファンで、好きなのかを楽しそうに話してくださいました。もうホント引いちゃうくらいに(笑)。現場でもとても優しくて、演出について色んな話をしたけど、一度も褒められたことはありませんでした。いやー、悔しいですねー。もっとできたのかもしれない。

 一貴さんや岸辺露伴チームから感じた「みんながアイディアを出し合って、どんどん作品をアップデートしていく」感覚はとても心地の良いものでした。昔、セリフが一言とかのいわゆるちょい役ってやつを一生懸命やっていた僕は、当日よく、「そんなこと気にしなくていいんだよ」「いいから言われたことをやれ」って言われたこともありました。今でも、僕の意見は作品のためのアイディアなのか、自分の傲慢さなのか、常に自問自答をしてしまいます。

 でもこの現場で感じた心地よさは、「大丈夫だぜ、こだわり抜いていいんだぜ」って、あのときの自分すらも肯定してくれるよう、そんな気がして胸がいっぱいになります。

 素敵な人たちと出会えて僕は幸せだし、これを読んでくれる人たちもきっといい人たちなんだろうなって思いながら、なんだか今日は気持ちよく過ごせそうです。

 最後まで読んでいただきありがとう。

 笠松将

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合にて放送
第4話「ザ・ラン」 12月27日(月)22:00~22:49
第5話「背中の正面」 12月28日(火)22:00~22:49
第6話「六壁坂」 12月29日(水)22:00~22:49
(第1~3話:2020年12月放送)
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第4話ゲスト:笠松将
第5話ゲスト:市川猿之助
第6話ゲスト:内田理央
第4話:真凛、中村まこと、増田朋弥、小水たいが、濱正悟、春木生
第5話:栄信、渡辺翔
第6話:渡辺大知、中島歩、井上肇、白鳥玉季、吉田奏佑ほか
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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