『カムカム』上白石萌音×深津絵里のヒロイン像を比較分析 正反対だけどそっくり?
上白石萌音、深津絵里、川栄李奈が主演するNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。現在は深津演じる2代目ヒロイン・るいの物語で、ジョー(オダギリジョー)とのロマンスが漂う展開となり、初代ヒロインを演じた上白石萌音と深津絵里のヒロイン演技の違いや共通点も出てきている。そこで今回、劇中での2人の朝ドラヒロイン演技を分析してみたい。
上白石萌音は初代ヒロイン・安子を演じ、安子の1人娘が深津演じる2代目ヒロイン・るいだ。2人の幼少期を比べると、安子は、岡山市の商店街にある御菓子司「たちばな」の看板娘で、家族や従業員から愛され、あんことおしゃれが大好きなごく普通の女の子。るいは、名家の雉真家で祖父や叔父に愛されて育ったきたが、それこそ母・安子と早くから袂を分かっており、少し陰のある幼少期を過ごしてきたと言える。
ただ、安子の出来事をなぞるように、るいのパートでも同じような出来事が起こるのが本作の興味深い演出だ。安子は、和菓子屋の店番をしている時に稔(松村北斗)と出会い、雉真家への配達の際に親交を深める。一方、るいは大阪で住み込みで働く竹村クリーニング店で大月錠一郎ことジョーと出会い、ジャズ喫茶「Night and Day」に配達をしに行った時に、ジョーの素性が分かり親交を深めていく。当初は安子やるいが相手に興味を持つも、次第に相手の方から好意を抱いて声をかけてくるようになったり、安子は英語を、るいはジャズを勧められて興味を持つ流れも一緒。安子と稔の初デートは夏祭りで、ジョーに誘われてるいがオシャレをして行くのが「Night and Day」のサマーフェスティバルという夏祭りつながりも。そして、稔が安子に自転車を教えるように、ジョーはるいにトランペットを教えるという距離の縮め方もシンクロしている。2人の性格もやはり、親子ならではの共通点が。本音は心にしまい、るいは何の頼りもなく大阪を訪れるわけだが、そんな一度決めたら曲げない性格は母・安子譲りだ。
そもそもそんな共通点を見出せるのも、2番目のヒロインとなった深津の演技力が功を奏した結果かもしれない。深津が10代の役を演じていること自体に驚きを隠せないわけだが、どこか当時の安子に寄せたような演技をしているのも感心せずにはいられない。「うわー、たけー」という声のテンションや、軒先でジョーと過去について話す時の目線の配り方と姿勢、特に1月12日放送の第50回の野球の後にジョーと向かい合って会話するシーンで、手を後ろに組んで「投げてみますか?」と誘う時の声と姿勢、そして「怪我したらあれやから」と言われた後に「そうですよね、すみません!」というおじぎの仕方、「大月さんのトラペントが聴かれへんようになったら私も嫌や」と笑顔で言う表情が、偶然か必然か、上白石演じる安子の面影を感じさせるのだ。母親のことは思い出したくないのに、同じような仕草をする、これが意図的な演技ならば深津の演技力はやはり奥が深い。