『カムカムエヴリバディ』“服”はるい編を象徴する重要アイテム? 当時の流行を振り返る
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)るい編が始まって、やはり目に留まるのはその華やかさだ。第46話では、るい(深津絵里)が錠一郎(オダギリジョー)の演奏するジャズ喫茶のサマーフェスティバルに出かける。そこでピンクのシャーベットカラーワンピースをるいが着ていたのが印象的だった。シャーベットカラー(シャーベットトーン)は1962年に流行した、淡い色合いのものを指している。
1960年代のウィメンズファッションは、世界的に見て主に3つのタイプのものが流行った。一つは、50年代の感覚を引き継いだ、エレガントでレディライクなもの。主にアメリカのファーストレディであったジャクリーン・ケネディが、この類のファッションアイコンになっていた。もう一つは、若々しくてカラフルなスウィンギング・ロンドンスタイルのもの。ちょうど昨年末に劇場公開されたエドガー・ライト監督作『ラストナイト・イン・ソーホー』がまさにその時代をテーマに掲げているが、この頃はポップで華やかなスタイルが流行。マリークヮントがファッションシーンを牽引し、のちにツイッギーなどのファッションアイコンが登場した。そして最後、後期にヒッピースタイルが流行ることになる。
さて、現在のるい編で描かれる1962年、日本ではJAFCA(日本流行色協会)が発表したカラーパレットを軸に、合成繊維メーカーである東洋レーヨンが中心となって展開されたカラーキャンペーンで「シャーベットトーン」がプッシュされ始める。資生堂はシャーベットトーンの口紅を、西武百貨店ではシャーベットトーンのファッションアイテムを打ち出していったが、なんと東芝の電化製品や不二家などファッションに関係ない大手企業も参加し、シャーベットカラーのアイテムを手がけていった(なお、不二家が売ったのは本当のシャーベット)。東芝レコードから香山ユリの「私のシャーベット」なんて曲まで発表され、世はあらゆるアイテムがシャーベットカラー尽くしだったことが、当時の『流行色』誌からうかがえる。
もちろん、企業のプロモーションの成功が結びついた結果とも言えるが、そもそも50年代にナイロン製造やテトロンの生産が始まるなど、化合繊維の発達も続いていたことや、化学染料の普及などが背景にあり、より淡いトーンのアイテムを大量に生産しやすい時代だったらしい。確かに、るいに限らず喫茶「Night and Day」のイベントに訪れた女性客(主に早乙女太一演じるトミーのファン)を見ると、皆がカラフルで、シャーベットトーンの服が目立つ。舞台に立つ錠一郎も、ピンクのジャケットスーツが印象的だった。舞台衣装とはいえ、メンズファッションの中にも、そういった鮮やかな色合いもアイテムが増えていたのかもしれない。