『カムカムエヴリバディ』なぜ片桐じゃダメだった? 風間俊介の笑顔が与えた悲しみ

『カムカム』なぜ片桐じゃダメだった?

 2021年の12月23日から“るい編”が始まった『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)。岡山を出て、大阪のクリーニング店で働き始めたるい(深津絵里)は、1人のお客さんに恋をした。弁護士の卵・片桐春彦(風間俊介)だ。

 るいは片桐に「堅実な人」という印象を抱く。シャツを預けた片桐は落ち着きのある雰囲気で、字も丁寧だ。ある日、るいはこわもての田中(徳井優)に言いがかりをつけられたが、ちょうどそこへやってきた片桐は厳しい声色で田中を制すと、彼を店から追い返した。立ちすくんでいたるいに「大丈夫ですか」と声をかける片桐の声は思いやりに満ちていた。その後、片桐が「僕も好きです。O・ヘンリー」と口にしたことで2人の距離は縮まり、第42回ではO・ヘンリーの小説について親しげに話す仲に。


 片桐を演じる風間俊介の微細な表情変化や言い回しが、るいと片桐の少しずつ距離を縮めている関係性の変化を気づかせる。片桐の「いつもありがとう」の言葉からは、律儀な人柄が感じ取れ、O・ヘンリーの小説を読むるいに「面白いのはあった?」と聞く優しい声色には、好意が表れている。デートへの誘いを、クリーニングに出した背広のポケットに忍ばせる、というのもなんだか片桐らしい。

 しかし、この直接的ではない片桐の優しさや気遣いが、かえってるいを傷つけることになった。るいの額の傷を見てしまった片桐の表情は、ショックを受けたようにも見えたし、彼女を憐れんだようにも見えた。その後、彼は気まずい空気を打ち消すように、傷を目にする前と同じように振る舞おうとした。恐らくるいがその後の食事の誘いを断らなければ、片桐はこれまでと同様な態度で接しようと「心がけた」のではないだろうか。けれど、るいは彼の表情を見て、惨めな思いを抱いてしまった。

 “るい編”の冒頭で語り部(城田優)によって語られたのは、額の傷は、るいにとって雉真家や自分を捨てた母・安子(上白石萌音)に縛り付ける鎖になっている、ということ。片桐が、その傷を見て不快感や失望を示すのではなく、笑顔で動揺を覆い隠したことで、より彼女の痛みが増したように感じた。片桐は冷酷な人物ではないが、るいの心を癒す人物でもなかった。



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