早乙女太一、『カムカム』で醸し出す妖艶な魅力 オダギリジョーとは正反対のキャラに
2代目ヒロイン・るい(深津絵里)と“ジョー”こと大月錠一郎(オダギリジョー)のほのかな、だけれどもはっきりとした恋の予感に包まれながら終えた『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第10週。
この2人の間に割って入ってくるだろう人物が既に2名いる。ジョーの追っかけをしている短大生のベリー(市川実日子)と、ジョーと同じくトランペッターのトミー(早乙女太一)だ。
トミーは両親もクラシックの音楽家という環境で、幼少期から英才教育を受け、音楽の基礎を叩き込まれた正真正銘のサラブレッド。その王子様ビジュアルに加えて、自然に滲み出る気品と気高さ、そしてナルシストぶりは何から何までジョーと正反対だ。女性ファンに常に囲まれており、黄色い声の中心にいるのもよく似合う。上下白色のスーツにハット姿があんなにキマる人もそうそういないだろう。トランペット演奏中の立ち姿もスラッと美しく、声も憎いほど素敵だ。
そんなトミーを演じる早乙女太一は本作が朝ドラ初出演。劇団員の両親の下に生まれ、幼少期から芸事を磨いてきた早乙女自身とトミーの生い立ちはどこか重なる部分があるのかもしれない。女形としても舞台に立ち“流し目王子”の異名を持つ早乙女の、視線やまばたきなどの繊細な表現、妖艶な演技はそのままトミーのすかした印象、洗練された立ち振る舞い、何をやってもさまになるところに通ずるのではないだろうか。トミーの言動全てがどこか憂いを帯び、育ちの良さがたちまち立ち昇る。
オダギリジョー演じるジョーの周りに流れる空気が“ほんわかのんびりしたもの”であるならば、早乙女太一扮するトミーが醸し出す空気感は“しっとりなめらか”だ。
トミーはるいを見るなり「ジョーのお気に入り」だと断言する察知力を持ちながら「ルイ・アームストロングがトランペットの神様やったら、君はさしずめ女神様やな」と、そんなことをさらりと言ってのけてしまう男だ。そしてそれが許されてしまう。