『千と千尋の神隠し』名作の理由は物語の構造にあり 『もののけ姫』との比較で見えるもの

『千と千尋の神隠し』名作の理由は物語構造?

 普遍的な物語の構造と、アニメーションならではの色彩表現が反響を呼び、本作はアカデミー賞をはじめ、国際的にも数多くの賞を受賞した。杉本氏は、世界のアニメーション業界のみならず、広く映画業界のクリエイターに大きな影響を与えた作品だと語る。

「それまで『AKIRA』や『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』などのアニメ映画が海外で熱狂的に受け入れられることはありましたが、それはあくまで限定的なマーケットを対象にした話。本作が、アカデミー賞長編アニメーション賞を獲ったことや、アニメ作品として初めてベルリン国際映画祭で金熊賞に選ばれたことは、全世界に大きな影響を与えました。さらに、昨今の『鬼滅の刃』ブームに至る、大人が当たり前にアニメ映画を観る風潮が拡大していったのも、この作品の影響が大きいといえます。もともとスタジオジブリは、80年代から良質なアニメーション作品を制作し、テレビとレンタルビデオを通じて家庭に浸透していきました。本作が公開された2001年以降、かつて子供だった観客が大人になり、親子2世代でジブリ作品を観に行くようになった時期でもあったのです」

 世界のクリエイターに影響を与え、その後のカルチャーにまで変化をもたらした『千と千尋の神隠し』。宮崎監督の個人的な動機から出発したアニメーション映画は、普遍的であるがゆえに世代や国を超え、今も人々の心を揺さぶり続けている。

■放送情報
『千と千尋の神隠し』
日本テレビ系にて、1月7日(金)21:00~23:34放送
※40分拡大 ※ノーカット放送
原作・脚本・監督:宮崎駿
音楽:久石譲
声の出演:柊瑠美、入野自由、夏木マリ、内藤剛志、沢口靖子、神木隆之介、菅原文太
(c)2001 Studio Ghibli・NDDTM

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