『千と千尋の神隠し』名作の理由は物語の構造にあり 『もののけ姫』との比較で見えるもの
宮崎駿監督作『千と千尋の神隠し』が、1月7日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される。
本作は、2001年に公開されると、瞬く間に観客動員数を伸ばし、当時の日本の歴代興行収入1位を更新。その人気は国内だけにとどまらず、第75回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞するなど、海外でも高い評価を受けた。
さらに、公開から20年以上が経った今でも人気は衰えず、新たに舞台化も決定。主人公・千/千尋役を橋本環奈&上白石萌音によるWキャストで、2月28日から上演されることが発表されている。
ジブリ作品の中でも、『千と千尋の神隠し』が根強い人気を誇る理由はどこにあるのだろうか。ライターの杉本穂高氏は、「普遍的な物語の構造が、幅広い層に受け入れられた要因ではないか」と語る。
「『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』をはじめとして、少年少女が異世界に迷い込み、成長するストーリーというのは、昔から愛されてきた、いわば物語の型のようなものです。子供が主人公ではありませんが、最近の作品でいえば、韓国ドラマ『愛の不時着』(Netflix)もこれに当てはまります。宮崎監督は、本作の前に『もののけ姫』を完成させ、一度は引退宣言までしていました。集大成ともいえる大作を作り終えた後だったのもあり、本作は知人の娘に捧げるためというミニマムな思いが制作の動機になっています。それが、誰にでも親しみやすい名作となった一因でもあるでしょう」
また、杉本氏は本作の注目すべきポイントとして「色彩」を挙げる。
「前作の『もののけ姫』とは異なり、観ているこちらも多幸感を覚える色彩感覚の映像表現に仕上がっています。千尋が迷い込む世界は、賑やかで猥雑な、ある意味カオスな空間で、現実の繁華街によく似ています。豊かだけれど、綺麗なだけではない大人の世界に、10歳の女の子が放り出されてしまう。油屋はただの異世界ではなく、現実社会のメタファーとして機能しているのもポイントです」