『カムカム』るいの中で反芻する母との記憶　ジョーの「サニーサイド」が呼びおこした過去

　ベリーは牽制するかのように、るいの隣に座って何だかんだトミーのことなど周囲の人間について教えてくれる。一方、そんな2人の様子を舞台の端からうかがうジョーとトミー。ジョーは偶然か、るいの選んだピンクシャーベットにマッチするジャケットを着ている。そして来てくれた彼女を嬉しそうに見つめていた。しかし、トミーはすでに彼女が雉真繊維のお嬢であることまで見抜いていた。その凄まじい特定力、そしてるいに向ける視線は単なる好奇心なのか、それとも……。

　ジョーが舞台に上がり、るいに向かって微笑む。るいも微笑み返す。しかし、そんなジョーに向かって微笑むのがベリー。舞台からるいを見つめるトミー。視線が交差していく。しかし、ジョーの演奏が始まると、るいの視線はステージではなく、過去へと向けられるのであった。

　思えば、彼と出会ってから「コーヒー」、「ルイ・アームストロング」、「レコード」、「名前の由来」と、母・安子との繋がりを想起させるものが次々に登場してきた。あの「Dippermouth Blues」で過ごした時間が、るいの記憶の中で呼び起こされる。そしてジョーが吹くのは、「On the Sunny Side of the Street」。

　少し前から、彼はこの曲を彼女の前で小出しに演奏してきた。その曲が彼女にとって何か深い思い入れのあるものだとどこかで勘づいているのか、はたまた“彼にとって”、この曲が実は重要な過去の思い出に繋がっているのかもしれない。しかし、今日の放送のラストカットでるいの耳が捉えていたのは、ジョーの演奏ではなく、「Dippermouth Blues」で流れていたレコードの音……“過去”だった。それがいつ、ジョーの奏でる音――“現在”に変わっていくのか。やはり過去のトラウマからるいを救い出すのは彼の役目なのか。交差する視線とともに追っていきたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演：上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本：藤本有紀
制作統括：堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽：金子隆博
主題歌：AI「アルデバラン」
プロデューサー：葛西勇也・橋本果奈
演出：安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか　
写真提供＝NHK