『カムカム』オダギリジョーの“ずるさ”が炸裂 るいの“心のシミ”が広がっていく
るい(深津絵里)は18歳で岡山を出て、大阪でまっさらな人生を歩み出したかのように見えた。まるでシミだらけのシャツをクリーニングへ出すみたいに。でも簡単には落とせない頑固な汚れもある。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第45話は、るいが見えないフリをしていた心のシミが少しずつ広がっていくような回だった。
ジャズ喫茶「Night and Day」との契約を取り付け、竹村夫妻からいつもより多く給金を受け取ったるい。使い道を聞かれ、欲しいものはないから「貯金」と答えるその表情は笑顔だけど暗い。そんな彼女を見兼ねてか、これまで何も言わず優しく見守ってきた和子(濱田マリ)が初めて苦言を呈す。
「ちょっとでええ。ちゃんと使いなさい」。そう言われて街に繰り出するいだったが、やはり欲しいものは見つからず途方に暮れる。ボーッとしているとぶつかったのは“宇宙人”改め、ジョー(オダギリジョー)。何を勘違いしたのか、ジョーはるいをレコード屋の新譜コーナーへ導く。
「これやろ? えっ違うの?」「違います……」
「えっじゃあ何のレコード買いに来たん?」「レコードを買いに来たわけじゃあありません」
「えっじゃあ何しに来たん?」「通りかかっただけです」
「えっじゃあどこに行くん?」「どこって……」
まるでコントのようなやり取りの中で、すっかり忘れていた当初の目的を思い出するい。給金の使い道を探しているという彼女に、ジョーが勧めたのはルイ・アームストロングのレコードだった。曲は「On The Sunny Side Of The Street」。るいの頭の中でメロディが流れるとともに、母・安子(上白石萌音)との温かな思い出が蘇って胸がチクリと痛む。あの日々こそ、るいが求めているもの。本当に欲しいものはお金じゃ買えない。
結局何も買わずに帰ろうとしたるいをジョーは「コーヒー代にしたら?」とジャズ喫茶に連れていくが、そこでもトミー(早乙女太一)やベリー(市川実日子)に過去を詮索され、るいの記憶が掘り起こされていった。るいはリアル岡山県出身のオダギリジョー演じるジョーに出身地を当てられ、思わず固まる。名前の由来を聞かれ、咄嗟に「叔父が野球しよったから」と濁したるい。まさか勇(村上虹郎)の、るいは野球の“塁”という勘違いがここで繋がるとは。