『王様ランキング』が問いかける弱さと強さ ボッジと共に追い求めたい世界への希望

それぞれの「強さ」が、世界を豊かにする

 一方で、ボッジとは対照的に順風満帆なように描かれる異母弟のダイダだが、彼もまた違う形で「強さ」について学んでいく。耳の聞こえない兄のボッジのみならず、城下町で見かけた目の見えない男に対しても、どう理解していいのか苦しむのだった。

 心身ともに健康で武術にも長けたダイダは、自分のことを強者として疑わない。だが、そんなダイダに指南役は「それは彼と同じ立場になったら生きていけないということか?」と問われるシーンが印象的だった。一般的に弱者だと見られる境遇になっても生きている彼らのほうがよっぽど強いのではないか、と。

 「強さ」とは何か。多くの他者を跪かせる「強さ」と、絶望に打ちひしがれることなく自分の人生を生きていく「強さ」。王様ランキングの上位に君臨するためには、抱える強者の数、そして王様自身の「強さ」に加えて、その国の豊かさも総合的に評価されるとあった。選ぶことのできない様々な背景を持った人たちも笑顔で暮らせる国を作るということ、それが本当の強さなのだと理解できる強者はなかなかいない。

 「弱さ」から「強さ」を目指すボッジと、「強さ」から「弱さ」を知っていくダイダと。2人の兄弟は真逆のルートで己の「強さ」とは何かを探っていくのが、この物語の大きな見どころと言えそうだ。そして、同時にそれを見守る視聴者自身にも問いかけられるのだ。自分の「弱さ」と「強さ」について。

 誰もが「強い」と思っていたボッス王は、その強欲さそのものが「弱さ」として見える瞬間がある。対して、ダイダの母でボッジの継母であるヒリングは攻撃力は「弱い」かもしれないが、我が身を省みず必死に息子たちを守ろうとする母性の「強さ」に胸を打たれる。私たちが表面的に見ている「強さ」「弱さ」だけではないものが、この世界にはあるということ。

 だからこそ、「自分を無力だなんて思わなくていい!」のだ。それぞれの人生をそれぞれが強く生きることで、誰かの「強さ」につながっていく。自分も強くありたいと「弱さ」と向き合うきっかけをもらえる。そうして、色とりどりの世界が強く豊かな世界になるのではないかと、この物語を通じて勇気をもらうことができるのだ。

 果たして、王様ランキングの上位に立つのは誰なのか。本当の「強さ」とはどうやって育まれていくのか。絶望しやすい混乱の時代を生きる今、ボッジの成長と共に豊かな世界への希望を追い求めたい。

■放送情報
『王様ランキング』
フジテレビ“ノイタミナ”にて、毎週木曜24:55~放送中
声の出演:日向未南、村瀬歩、梶裕貴、佐藤利奈、江口拓也、上田燿司、安元洋貴、田所陽向、山下大輝、三宅健太、本田貴子、坂本真綾、下山吉光、櫻井孝宏
原作:十日草輔 『王様ランキング』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:八田洋介
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン・総作画監督:野崎あつこ
サブキャラクターデザイン・総作画監督:河毛雅妃
副監督:今井有文
チーフ演出:渕上真
メインアニメーター:大城勝、小笠原真、藤井望
美術監督:金子雄司
美術設定:藤井一志
色彩設計:橋本賢
撮影監督:出水田和人、上田程之
編集:廣瀬清志
音楽:MAYUKO
音響監督:えびなやすのり
音響効果:緒方康恭
アニメーションプロデューサー:岡田麻衣子
アニメーション制作:WIT STUDIO
(c)十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会
公式サイト:https://osama-ranking.com/
公式Twitter:https://twitter.com/osama_ranking(@osama_ranking)

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