『映像研には手を出すな!』が支持され続ける理由 アニメ文化の促進に寄与した稀有な一作に

 毎週日曜19時からNHK Eテレにて再放送中のTVアニメ『映像研には手を出すな!』。

 2021年度に開催された第24回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門では、見事大賞を獲得した作品である。

 アニメファンはもちろん、文化人からも高評価を受けたこの作品。どういった点が評価を得たのか、また過去に文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を獲得した作品との違いや共通点を探っていきたい。

 『映像研には手を出すな!』は、2020年1月から3月までNHKで放送されたTVアニメ。監督を湯浅政明が、アニメーション制作をサイエンスSARUが担当している。同名コミックの大童澄瞳による原作は、『月刊!スピリッツ』(小学館)にて連載中だ。

 この作品は、芝浜高校1年生の浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメの3人が学校や生徒会と対立しながらも「映像研究同好会」を立ち上げ、アニメーションを制作していく過程を描いた青春群像劇である。

 アニメーションとしての魅力は、キャラクターたちがアニメーションを通して成長していく姿が目に見えてわかる点だ。頭の中にある絵が上手く再現できず「描けない」と嘆いてる様子から、実際に自分で芝居をしてみることで体の仕組みを理解する様子、その動きを収めた動画を見ながら実際に作画用紙に描いていく様子、作画用紙をパラパラとめくり手で絵を「動かしている」様子、コンポジット後のプレビュー映像を観て感動している様子、完成したアニメーションに圧倒されている観客を見ている様子……。

 彼女たちのイメージの中にあるアニメーションが作画用紙に書き出され、完成して公開されるまでの苦楽を鮮明に描いている作品のため、観ている自分たちもこのアニメーションに携わった一員だと錯覚する。3人が完成させたアニメーション1カットごとに思入れがあるため、上手く繋がって「アニメーション」になっている様子を観てほっとするのだ。このような作品を制作する中での細かい過程の描写は、アニメーションを生み出す難しさや楽しさ、素晴らしさを伝えている。

TVアニメ「映像研には手を出すな!」名言集PV

 彼女たちのやり取りは、「なぜ我々はアニメーションに心躍るのか?」という根本的な問いに対し、明晰な言葉を与えてくれる。3人が話しているのはアニメーションについてだが、そこで語られる情熱はあらゆる創作行為に通底するものでもあるだろう。

 本作を視聴したあとは、これまで漫然と観てきたアニメ作品、ひいてはあらゆる創作物の背後にある数多の作り手の情熱やこだわりが意識できるし、自分もなにかを形にしてみたいという衝動に駆られる。そこに本作がとりわけクリエイターに支持される理由があるのではないだろうか?

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