『その年、私たちは』交差する過去と現在 チェ・ウシク×キム・ダミの演技が活きる作品に

『その年、私たちは』交差する過去と現在

 ヨンスは人間らしいウンを引き出してくれたが、もう一人ヨンスといるといつもと違う自分になってしまう人物がいる。ドキュメンタリーの担当PDであり同級生のキム・ジウン(キム・ソンチョル)だ。本人は気づいていないだろうが、普段クールなジウンは今回のドキュメンタリーについて感情的な面を見せることもあれば、ヨンスと話している時はいきいきとして口数が多くなる。いつもより口角が上がった笑顔を見せてくれるのもヨンスが隣にいるからだろう。旅行の撮影を誰よりも楽しんでいたのはジウンだと断言できるほどである。そして、優秀なジウンの部下チョン・チェラン(チョン・へウォン)は恐らくジウンのことが好きで、ジウンの気持ちにも気づいている。ジウンをはじめチェランやNJ(ノ・ジョンウィ)の存在は、ウンとヨンスの関係を遠ざけたり近づけたりしていくだろう。

 ヨンスは知れば知るほど魅力的な女性だ。ウンが不安な要素を10個抱えていたら、ヨンスはたったひとつの言動でその不安を全て吹き飛ばしてくれる。ウンはヨンスに振り回されていると思っていたのかもしれないが、ヨンスは余裕がない生活の中で精一杯ウンのことを想っていたし大切にしていた。だから「私の方がもっと愛している」の言葉も嘘偽りないことだとわかる。ウンは居心地が悪い過去に怒っているのではなく、別れてからお互いの悪口を言い合っている瞬間も、自分を愛してくれたヨンスが心の中からいなくならないことがもどかしくて言い過ぎてしまうのかもしれない。嫌いになれたら楽になれるとわかっていても、それができないから辛いし、切なさが増す。

 今までずっとウンを避け続けていたヨンスは、ようやくウンのことを受け入れた。というよりも、自分の正直な気持ちを受け入れ始めたのかもしれない。たとえデジャブの魔法でそうなってしまったと言い訳しても、これまでとは違う空気が二人の間に流れるだろう。それから、次に行動を起こす人はヨンスのようだ。立場が逆になったウンが慌てふためく様子を想定できるのもまた微笑ましい。その中で、心情の変化を見逃さないようにしっかりと向き合っていきたい。

■配信情報
『その年、私たちは』
Netflixにて独占配信中

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