『カムカム』ジョーのケチャップのしみの理由が判明 るい編の鍵握るモノローグの効果
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第44話では、謎に包まれた“宇宙人”の生態が明らかになった。ジャズ喫茶「Night and Day」のオーナー木暮(近藤芳正)に頼まれ、店の衣類を預かることになったるい(深津絵里)。トランペットのマウスピースを返すため、ジョーこと大月錠一郎(オダギリジョー)の居所を尋ねる。
屋根の上のヴァイオリン弾き、ならぬ屋根裏のトランペット吹き。雑然とした物置のような部屋にその男はいた。クリーニングした衣類を渡し、インスタントコーヒーを作りながら、るいが千吉(段田安則)を思い出していると、ジョーに話しかけられる。「これもしかして“宇宙人”って書いてる?」。やっぱりばれた。るいはとっさに「ただの記号です」と返し「すみません」と謝る。しかし、ジョーは意外な反応を示してきた。
「えー! なんかかっこええなあ」……もしかして、喜んでる? その様子を見たるいは、内心で「良かった。変わった感性の人で」と胸をなでおろした。珍妙な2人の応答に視聴者の総ツッコミが入る中、物語は進行。るい編に入ってからの大きな変化として、心の声(モノローグ)の挿入が挙げられる。笑顔の少ない内気な主人公の言動を補うもので、視聴者はモノローグを通してるいの心情を追体験できる。るいがクリーニング品を手にしてあれこれ想像をめぐらす場面は、豊かな内面を持つるいのパーソナリティを物語っていた。
会話に戻ると、ジョーがるいを「サッチモちゃん」と呼ぶ理由は、もちろんルイ・アームストロングなのだが、当のるい自身はルイ・アームストロングをよく知らなかった模様。ジョーにレコードのジャケットを見せられて「こねん顔じゃったんか」と今さらながらに目を丸くする。出征する父・稔(松村北斗)が、男でも女でも大丈夫と言って付けたのがこの名前だったので、恨むなら父を恨むのが筋である。それはともかく、ドラマ的に重要なのは、ジョーが吹いたのが「On the Sunny Side of the Street」だったこと。メロディを耳にしたるいの眼からは、自然と涙がこぼれた。陽の当たる屋根裏部屋で、柔らかいトランペットの音色がるいの心の奥の何かに触れたのだ。