笠松将は痕跡を残し続けることができる俳優だ 力量を知ることができるオススメ映画3選

笠松将の“覚悟”に触れる映画3作

『君は永遠にそいつらより若い』(2021年)

 ラストの1本は何にしようか、とても悩ましいところ。詩的でファンタジックな『ドンテンタウン』(2020年)や、吃音症によっていじめを受ける高校生を演じたスプラッター映画『ファンファーレが鳴り響く』(2020年)も捨てがたい。そんな中、筆者として大切な一作となった『君は永遠にそいつらより若い』を挙げようと思う。同作は、大学生の主人公(佐久間由衣)が他者や社会との関わりの中で、より自我というものを確立させていくさまを描いたもの。笠松が演じる大学生の穂峰は、主人公に大きな影響を与える人物だ。しかし、本作での笠松の登場シーンは、数シーンしかない。にもかかわらず、鑑賞後は穂峰の控えめな笑顔が頭から離れない。これは、穂峰の退場後も主人公が彼のことを思い出し、自分の行動の指針とするような物語の構造によるものでもあるが、やはり何よりも、笠松が演じたからこそだと筆者は思う。“そこにいないのに、いる”ーーというと妙な表現になるが、退場後も作品全体に自身の痕跡を残し続けることができる俳優は稀有である。本作は2021年の秋公開の作品とあって、地域によってはまだ上映されているかもしれない。スクリーンで観られる機会のある方は劇場に駆け込んでほしい。

 2022年の笠松は、金子雅和監督による映画『リング・ワンダリング』で主演を務めており、アート性とエンターテインメント性が高次元で結びついた同作は、彼の新たな代表作となること必至の傑作だ。そして春には、笠松が主要キャストの一人として参加した、ハリウッドとの共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』(WOWOW)が放送・配信される。後退どころか停滞すらなく前進し続ける笠松将。この年、確実にネクストステージへと上がるだろう。

■公開情報
『リング・ワンダリング』
2月19日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国公開
出演:笠松将、阿部純子、片岡礼子、長谷川初範、田中要次、品川徹、安田顕
監督:金子雅和
脚本:金子雅和、吉村元希
劇中漫画:森泉岳土
配給:ムービー・アクト・プロジェクト 
(c)2021 リング・ワンダリング製作委員会

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