『ハコヅメ』川合×藤にみる、令和ならではの師弟愛 永野芽郁がコメディエンヌの才を開花

『ハコヅメ』川合×藤、令和ならではの師弟愛

 川合は新人の女性警官でどちらかというとダメダメのドジっ子キャラだが、川合を演じる永野の芝居は達者で安定感がある。連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)で主人公を演じて以降、永野は俳優として急成長しており、川合のリアクションを見ているだけでも楽しめる。一方、作品のメッセージを担っているのが戸田の演じる藤である。彼女の語る警察官としての矜持には毎回、感銘を受けた。

 例えば第1話で、自殺するという通報を繰り返す男性のアパートを訪ねた際「どうせいつものですよ」と言って帰ろうとする川合に対し、藤は「確かに通報内容にはいたずらや虚偽通報、くだらないものも多い。でもそれに対応する私たちは、いつだって本気じゃなきゃダメなの」と言う。

 また、第2話では、川合はガサ入れの場面で箪笥の中にある女性の下着を広げろと言われて「できません」と言って仕事を放棄してしまう。その際、藤は川合を一方的に叱ったりせず「川合の反応が正常」「慣れちゃった私たちの方がおかしいよ」と語りかける。

 川合が間違った行動を取って失敗したり、迷って動けなくなると、藤は優しい口調で助言を与えてくれる。藤が川合を諭す態度は冷静で淡々しており、押し付けがましさは無い。だが、警察官という仕事に対して彼女が誇りを持っていることはちゃんと伝わってくる。

 新人時代に藤のような先輩に出会えた川合は幸せだ。逆に藤の立場から見たら健気に頑張っている川合のような後輩はかわいくて仕方がないのだろうと思う。職場のハラスメントが大きな問題となっている令和の時代ならではの師弟愛である。クールでお茶目なところもあるが、シリアスな場面では冷静に諭してくる藤の振る舞いは、そのまま『ハコヅメ』というドラマの哲学を表している。

 本作は、緩いところは緩いが、押さえるべきところはしっかり押さえた作りとなっている。だからこそ観終わった後は「良い話を観たなぁ」と後味がいい。

 面白いのはこの構成が毎話だけでなく全体にも反映されていることだ。話が進むにつれて、刑事課のエースだった藤が町山交番の勤務になった本当の理由が明らかになり、物語はシリアスな方向へと変わっていく。だが完全にシリアス一辺倒にはならず、最後まで緩い部分を残している。そして、この緩さがあるからこそ、結果的に救いのある結末につながっていく。このシリアスとコメディの絶妙なバランス感覚こそが『ハコヅメ』最大の魅力だろう。川合を優しく見守る藤のような大人でありたいものである。

■放送情報
『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』
日本テレビ系にて放送中
12月28日(火)11:55~14:55
12月29日(水)11:55~14:05
12月30日(木)11:55~16:00
12月31日(金)11:55~14:05
出演:戸田恵梨香、永野芽郁、三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬、平山祐介、千原せいじ、ムロツヨシ
原作:泰三子『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(講談社『モーニング』連載中)
脚本:根本ノンジ
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:藤森真実、田上リサ(AX-ON)
協力プロデューサー:大平太
演出:菅原伸太郎、南雲聖一、伊藤彰記
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hakozume/
公式Twitter:@hakozume_ntv
公式Instagram:@hakozume_ntv

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