『ハコヅメ』川合×藤にみる、令和ならではの師弟愛 永野芽郁がコメディエンヌの才を開花

『ハコヅメ』川合×藤、令和ならではの師弟愛

 今年の夏クールに放送された『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系、以下『ハコヅメ』)が12月28日から31日にかけて再放送されている。

 本作は新人警官として町山警察署の地域課に配属され、町山交番勤務となった川合麻依(永野芽郁)が先輩の藤聖子(戸田恵梨香)の元で警察官として成長していく姿を描いたドラマだ。

 原作は警察官出身の泰三子が『モーニング』で連載している漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(講談社)。物語は基本的に1話完結で、川合たち警察官の日常を切り抜いて楽しく見せていく。モーニングの青年漫画が得意とするお仕事もので、知っているようで知らない交番勤務の内幕がわかるのが、読んでいて楽しい。

 対してドラマ版は、原作漫画の複数のエピソードをつなげて1話にまとめている。脚本を担当したのは『監察医 朝顔』(フジテレビ系)などで知られる根本ノンジ。それぞれのエピソードが有機的につながり最終的にひとつの物語に収斂されていく構造が毎話見事だった。

 基本的にはシチュエーション・コメディの連鎖で作られているため、ドラマとしての敷居が低く、どこから観ても楽しめる。コメディとしての『ハコヅメ』を支えているのは町山交番の所長・伊賀崎秀一を演じるムロツヨシと藤を演じる戸田恵梨香、そして川合を演じる永野芽郁の軽妙なやりとり。

 『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)では恋人役だったムロと戸田だが『ハコヅメ』での呼吸もバッチリで、二人が映ると画面にユーモアが生まれる。そこに川合を演じる永野が加わることで更なるケミストリーが生まれるのだが、やはり本作最大の収穫は永野芽郁のコメディエンヌとしての才能ではないかと思う。

 永野とムロも福田雄一監督のドラマ『親バカ青春白書』(日本テレビ系)で親子として共演していた。だが、永野が演じていたのは『ハコヅメ』とは正反対の天然の女の子で、芝居をリードしていたのは父親役のムロだった。

 対して今回の川合は、変人揃いの警察官の中でふつうの人の視点を持ったツッコミ役なので、相手のボケを「受ける」芝居が多かった。新人警官という役割とは裏腹に、ドラマ全体のリズムを作っていたのは永野の芝居で、彼女の目を通して警察官のおかしな世界を覗き見るという構成となっている。つまり永野の適切かつ、ややオーバーなリアクションがあるからこそ視聴者は作品の中に入っていけるのだ。

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