笠松将、変化した思いと変わらぬ思い 「次のステージを目指さないといけない」
いろんな感情が自分の中で分裂している
ーー何かわかりやすいきっかけはあったんですか?
笠松:去年の最初の緊急事態宣言のタイミングです。学生時代は部活や勉強、バイトに忙しくて、俳優業を始めてからも多忙な毎日で、自分と向き合うような時間ってなかったんです。というか、時間のあるなしにかかわらず、向き合い方を知らなかったんですね。でも、去年、いきなり2カ月間パコーンって空いて、何をしますかと。たくさん寝たら気持ちがいい、本を読むといろんなことに気づける、久々に人と会って話すとリフレッシュできる……言葉にすると馬鹿みたいですけど、いろんな価値観がこの頃に変わりました。それが緊急事態宣言明けも、ずっと続いている感じです。
ーー2021年の出演作を振り返ると、FOD配信ドラマ『エロい彼氏が私を魅わす』は、これまでとは一味違う役柄でしたね。
笠松:もともとラブコメ作品はあまりなじみがなくて、正直、はじめは乗り気じゃなかったんです。でも、台本を読んだらめちゃくちゃ面白いし、今までやったことのないタイプの作品をやるのって本当に面白いなと。そして、めちゃくちゃ難しかったです。だから、これまでいろんなラブコメ作品がありますが、出演している方々へのリスペクトが湧きました。“格好いい”って本当に難しい。この作品で視野が広がりましたし、また機会があればやりたいです。歳を重ねて、60代とかでやるのも楽しそうですね(笑)。
ーーそして、10月の土曜ドラマ『正義の天秤』から、大河ドラマ『青天を衝け』、スペシャルドラマ『岸辺露伴は動かない』とNHKドラマへの出演が続きました。
笠松:たまたまなんですけど。NHKさんにたくさん呼んでいただいてうれしかったですね。
ーー『岸辺露伴は動かない』はエピソードが発表される前にゲストキャストが発表されました。笠松さんということで、「『ザ・ラン』だろう」とジョジョファンの声も上がっていました。実際、原作の橋本陽馬に似ていると思います(笑)。
笠松:本当ですか(笑)? うれしいです。『ジョジョの奇妙な冒険』はもちろん知っていたのですが、『岸辺露伴は動かない』も含めて、漫画は読んだことがなかったんです。お話をいただいて、原作を読んでむちゃくちゃ面白いと思ったと同時に、これはとんでもないプレッシャーだなと。放送前ですが(取材は11月下旬)、泣きそうですよ、もう。
ーーちょうど1年前に放送された第1話~第3話が大評判だった上に、超人気原作の映像化ということで、なかなかハードルが高い作品ですよね。
笠松:本当に高いし、怖いですよ。ただ、その怖さこそが辛さを超えられる唯一の源というか。叩かれてしまうかもしれないし、褒めていただけるかもしれませんが、やれることは全部やったつもりです。お手柔らかにお願いしますって感じですね。僕も完成映像は観ていないのですが、数シーン観ただけでも、めちゃくちゃ格好よかったです。僕が一番放送を楽しみにしているかもしれません。
ーー笠松さんのInstagramでも食事制限の様子が垣間見えましたが、ここまでの体作りはいかがでしたか?
笠松:食事管理は本当にストレスがたまりました。「食事制限」と言うと量を減らすイメージだと思うのですが、筋肉をつけるために「食べること」も必要なんですよ。食べたくないのに食べないといけない、でもたくさん食べていいわけでもないから、途中で止めないともいけない。これが本当に辛い。寝る前も食べるし、早起きしても、食べないといけない。ラスト2週間はそこから削っていく作業だったので、食べるのに慣れたら今度は減らすんかい! というストレスもありました。ただ、めちゃくちゃ健康になったと思います。
ーーそして、大河ドラマ『青天を衝け』にも主人公・栄一(吉沢亮)の孫・敬三役で第40回から登場。最終回の第41回でも重用な役割を担う人物です。
笠松:1年以上にわたり撮影が続いている作品の最終幕に参加させていただきうれしい限りです。吉沢さんは自分と同世代で大河の主役という大役を1年以上にわたり背負っていた。精神的にも肉体的にも大変だったと思いますし、本当にすごいなと。スタッフ・キャストの方々が大切に育ててきた作品の最後に登場させていただいて、集大成のような場面でバトンを受け取る役柄なんですけど、本当にこの作品を大切にしたいと思いました。現場では皆さんが温かく迎え入れてくださり、黒崎(博)監督も僕を信じて、敬三という役を預けて下さいました。どの作品の出演自体もうれしいのですが、やはり大河ドラマは家族が今まで以上に喜んでくれて。『岸辺露伴は動かない』『青天を衝け』と超話題作に出るプレッシャーと、「俺以外にいないでしょ」と思う気持ちと、その両方がずっとあります。ネガティヴとポジティヴもあるし、呼んでくれた方々への感謝ともっとやりたいという思いと、もうやりたくないという思いと。いろんな感情が自分の中で分裂している感じです。でも、全部含めて、そう思えることが大きな財産なんだなと。主演の吉沢さん、監督の黒崎さんから本当に学ぶことが多かったです。