『カムカムエヴリバディ』るいは新天地へ 残された“ミセス雉真”の雪衣について考える

『カムカム』“雉真”雪衣の気持ちを探る

 それに、今回の件で勇と雪衣の印象を少し考え直さざるを得なかった。というのも、冷静に考えてみれば、つわりのタイミングを考えると、雪衣が算太に目撃される前から、密かに勇と肉体関係を重ねていたのではないだろうか。どれほどの逢瀬を重ねていたかは不明だが、もしも勇が自分とはやることやっておいて「本命は安子です」と言わんばかりに彼女のことを目の前で追い続けていたのなら、それこそ雪衣にとってしんどいし、彼女が安子に対してああなるのも納得だ。跡取りに関わることだから、勇が避妊にも十分注意していた可能性だってある。であれば雪衣の流した涙は、“叶わぬ恋”以上に辛いものだったのかもしれない。なお、これらはあくまで筆者の憶測に過ぎないが……。考えれば考えるほど深い。

 ただ、るいの自立のきっかけは、18歳という年齢の節目もあるだろうが、もしかしたら子供の頃から自分を「雉真の人間」としてそこに留めることにこだわった千吉が他界したことも関係あるのかもしれない。そして何より母との思い出を断ち切るためだった。大阪についた彼女のウキウキぶりがミュージカルによって表現される。しかし、面接に行くと「前髪をあげて」と言われ、否が応でも“傷”のことを意識せざるを得ない。

 彼女がその後も、雉真に縛られたくないという理由で手術を拒否し続けていたことが今回わかった。しかし、それが母・安子に縛られる鎖であったことに、岡山を出たあとに気づいたるい。繋がりを絶とうとしても絶てない。本当に絶ちたいのかもわからない。その相反する感情は、涙となって溢れ返った。そんな彼女を暖かく迎える、クリーニング屋の夫妻。るいはこの街で、ひなたの道を歩むことができるのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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