『逃げ恥』から『ハンオシ』へ なぜ“契約結婚ラブストーリー”は繰り返し描かれる?
“普通の結婚=恋愛結婚”神話の崩壊
また、現代において「“普通”の結婚」と称される恋愛結婚に、疑問を持つ場面も多くなっている可能性もある。SNSの発達によって個人の声が広く届く今、結婚生活に対する不満を見かける機会も増えた。
これには、円満で幸せなノロケ話よりも、トラブルによる苦労話のほうが、興味関心を引いて拡散されやすいという性質もあるのだが、「まだ結婚はいいかな」と思っている人にとっては結婚が人生の大きなリスクとして印象づくこともありそうだ。
恋愛は非日常、結婚は日常。生活の変化に伴って、相手に求めるものが変わっていくことは、ごく自然なことだが、そうなって初めて見える素の部分に幻滅することもある。“普通”の結婚をしたからといって「めでたしめでたし」とはいかないことが知れ渡ってしまった。
ならば、「いっそ恋愛のステージなしに結婚するのもありかも?」「友達のようにルームシェア感覚で結婚できる相手のほうが楽かも?」なんて、イレギュラーな結婚をリアルに考えることにも抵抗が少ない空気が漂っているようにも感じる。
とはいえ、2人だけの生活でとどまるわけではないのが、結婚の難しいところ。『ハンオシ』でも、「理想の家族を作りたい」と妊活の壁にぶつかる柊の兄夫婦や、「結婚という形にとらわれなくても家族はできる」と離婚を迫られていた明葉の上司の夫婦問題も同時に描かれる。
1人でいることも、2人でいることも、多くの家族を養っていくことも……どの道にも、選んだ現実と、選ばなかった“もしも”がある。それを悩みながら選んで進んでいくのが人生の醍醐味というものなのかもしれない。ときには、どうしようもなくたったひとつの道しか選べないというときもあるのだから。大事なのは、“普通”かどうかよりも、“自分”が納得した道を歩めるかどうか。
選べるうちは、その悶々とした時間さえも楽しんで。いつか大きな波風が立ったときには覚悟を決めて飛び込むこともあり! そして「えいや!」と決めたら、またその大きな渦の中でジタバタもがきながらも懸命に生きて! “普通”にとらわれることなく、“自分ならでは”な生き様を! 1人ひとりが手に入れられるように健闘を祈る! そんなエールが、繰り返し描かれる“契約結婚ラブストーリー”には込められているように感じる。
■放送情報
火曜ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:清野菜名、坂口健太郎、倉科カナ、高杉真宙、深川麻衣、田辺誠一、前野朋哉、中川翔子、笠原秀幸、小林涼子、森永悠希、長見玲亜、岡田圭右、木野花
原作:有⽣⻘春『婚姻届に判を捺しただけですが』(祥伝社『フィール・ヤング』連載中)
脚本:田辺茂範、おかざきさとこ
演出:金子文紀、竹村謙太郎ほか
プロデューサー:松本明子、那須田淳
編成:宮崎真佐子(※「崎」は「たつさき」が正式表記)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS