木村多江、エリコ役で“のほほん”女優に 何もかもが見間違えるほどのそっくり具合
一方『のほほん』で見せる木村の演技は、“薄幸”でも“怪演”でもなく、タイトル通り“のほほん”としている。木村演じるエリコは、安藤玉恵演じる疑似姉妹の妹・ミホと公私ともに常に一緒。ミホと一緒に暮らすのが「楽しい」と口にする柔らかな笑顔やマイペースなミホに振り回されるエリコの困ったような表情は、どこかまったりとしていて愛らしい。ミホにおせっかいを焼く姿は「身の回りにこういう人いそう」と思わせるほどの身近さ。エリコは感情の起伏が激しく、すぐ泣いたり落ち込んだりするのだが、木村の演技が決してドラマチックすぎないためか、何だか親近感を抱いてしまう。そのため本作を観ていると、ドラマ鑑賞というより、人当たりの良い近所のおばさんの日常を見ているような気分になる。
そして木村の演技で驚かされるのが、阿佐ヶ谷姉妹の姉・江里子本人かと見間違えるほどのそっくり具合。さりげない手の動かし方やあたふた動き回る時の腰の曲がり具合、声のトーンや早口気味に話す様子、「〜よお」「〜ねえ」といった語尾の響きにいたるまで、何もかもが似ている。SNS上でも「エリコの『良かった〜』という声、イントネーション、表情全てが江里子さんそのもの」という声が挙がっていた。再現度の高さは江里子本人も驚いているようで、阿佐ヶ谷姉妹と木村、安藤の対談動画では、ご近所さんにペコペコと頭を下げて挨拶する姿を絶賛している。公式サイトのインタビューによると、木村と安藤は、歌もネタも台詞も撮影中はひたすら練習していたとのこと。2人は阿佐ヶ谷姉妹を体現するために、徹底して江里子と美穂の所作を観察し、演技に取り入れている。実在する人物を演じることには多少のプレッシャーが生じるものだと思うが、木村も安藤も演技を楽しんでいたように見える。そんな2人のリラックスした心境もまた、『のほほん』の“のほほん”とした世界観をつくりあげたものの一つだろう。
対談動画の中で、木村は「本当になんでもない日常なんですが、ご覧になる方も些細な幸せを見つけていただけたらなと思っています」と話している。演じる役柄のことだけでなく、作品全体のテーマをしっかりと捉えて演じる木村だからこそ、『のほほん』が伝えたい「なんでもない日常の些細な幸せ」がエリコの言動を通じて視聴者に届くのだと思う。“薄幸”や“怪演”な木村も相変わらず魅力的だが、“のほほん”とした、ごく普通な日常を生きる人物を演じる木村を今後も観てみたい。
※参考
木村多江と安藤玉恵の撮影裏話!のほほ〜んとご覧ください♪ よるドラ「阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし」 |NHKオンライン
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=31440
■放送情報
よるドラ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』
NHK総合にて、毎週月曜22:45〜23:15放送(全7回)
原作:阿佐ヶ谷姉妹著『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』
脚本:ふじきみつ彦
音楽:髙城晶平(cero)・王舟
出演:木村多江、安藤玉恵、いしのようこ、中川大輔、楠見薫、山脇辰哉、宇崎竜童、研ナオコほか
制作統括:三鬼一希、櫻井壮一
演出:津田温子、堀内裕介、新田真三、佐藤譲
写真提供=NHK