『カムカムエヴリバディ』勇の中で芽生えた決意 雪衣の曇る表情が気になる

『カムカム』勇の中で芽生えた決意

 1950年に朝鮮戦争が勃発。アメリカ軍から大量の軍事物資を発注された日本は、特需景気に沸いた。皮肉にも戦争で多くのものを失った日本の復興は、また別の国で生まれた悲劇によって促されたのだ。

 そして復興を象徴するように、戦後の日本を明るく照らした平川唯一(さだまさし)のラジオ講座『カムカム英語』が約5年の歴史に幕を閉じる。安子(上白石萌音)の娘・るい(古川凛)は6歳になっていた。勇(村上虹郎)の働きや朝鮮特需により、経営が順調な雉真繊維はるいが入学する小学校の制服を作る。真新しい制服に身を包んだるいを囲む安子と勇。そんな2人の姿を見て、千吉(段田安則)はある覚悟を決めていた。

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第33話では、ついに安子と勇の再婚話が持ち上がる。

 すっかり雉真の頼もしい跡取りとなっていた勇に千吉は安子との結婚を促す。当時、戦争により伴侶を失った妻が夫の兄弟と再婚するのは珍しいことではなかった。るいも生まれた時からずっと可愛がってくれた勇に懐いている。勇と再婚すれば、雉真での安子の立場もハッキリとする。しかし、千吉が2人の結婚を勧める理由はそれだけではなかった。稔(松村北斗)と安子の結婚が反対された時、2人を一緒にさせてあげてほしいと千吉に直談判した勇。千吉にはその頃から、勇が安子に幼なじみ以上の感情を抱いていることはお見通しだったのだ。

 勇は幼い時分から雉真の跡取りとして期待されていた優秀な兄を尊敬する一方でコンプレックスを抱きながらも、「自分には野球しかない」と自分だけの力で道を切り開いてきた。戦争でそれすらも奪われ、心の拠り所だった安子も稔と恋仲に。『エール』の浩二(佐久本宝)、『おかえりモネ』の未知(蒔田彩珠)など、近年の朝ドラでも登場人物が兄弟・姉妹への複雑な心境を吐露する場面が描かれていたが、『カムカム』では本来なら自暴自棄になってもおかしくはない状況で、決して腐ることのない勇の姿が印象的だ。唯一怒りをあらわにし稔に殴りかかった時も、それは自分のためではなく安子や稔のためだった。

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