『ドクターX』積極的な姿勢が高視聴率の秘訣? コロナ禍もネタにする貪欲さ
第7シリーズの時事ネタの特徴は、パロディー的なものにとどまらなかったことだ。第4話には、ステイホーム中に医療従事者を歌の配信で励ましていたミュージカルスター・四季唯花(凰稀かなめ)が登場し、彼女の心意気に応える形で大門未知子が難手術を行った。第7話には医療系インフルエンサーとして知名度を得た森本光(田中圭)が再登場するが、「不要不急の来院自粛」を動画で呼びかけて、ファンの女性(根岸季衣)のがん発覚を遅らせるという事態を招いてしまった。
大門自身もコロナ禍がピークに達していたニューヨークの医療現場で「戦場だった」「あんなに患者が死ぬのを見たことないわ」と振り返るほどの苛烈な経験をしてきており、口実を作って現場から逃げ出した興梠(要潤)を軽蔑する一方、感染症の医療現場に真摯に取り組んできた一木蛍(岡田将生)や蜂須賀に敬意を払っていた。
もともと時事ネタが得意だったことに加え、コロナ禍という医療ドラマにとって極めて重要な時事ネタに真正面から取り組んだのが『ドクターX』ということになる。同クールの医療ドラマ『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート』(フジテレビ系)が原作ものであることからコロナ禍に触れなかったことと好対照である(そのこと自体に優劣があるわけではない)。
内山聖子エグゼクティブプロデューサーは『ドクターX』に時事ネタを取り入れることについて、かつてこのように語っていた。「今の時代に視聴者の皆さんが反応することと同じことに、登場人物たちも反応している。大門未知子や他の先生たちもみんな、視聴者の皆さんと同じ時代を生きている」「それぞれの年の『ドクターX』になればいいなと思っています。テレビドラマは基本的には時代と添い寝するぐらいの感じで作るので、常に今を意識しています」(※参考)。
大門未知子が無敵になりすぎたことで、やや対立構造が弱まってしまった感のある第7シリーズだったが、インパクトのある新キャラ、ナースXこと那須田灯(松下奈緒)を登場させたりするなどの手を打った上、時事ネタをガッツリと入れることでテンションを維持したように見える。
なによりも大門未知子をはじめとする登場人物たちが、我々と同じ時代を生きていると思わせてくれたことが人気につながったのだと考えられる。テレビドラマはいつだって時代を映すもの。近い将来、『ドクターX』の第7シリーズを見ながら「ああ、あのときは大変だったな」と思い返すときが来るはずだ。
※参考
脚本冴える「ドクターX」なぜ時事ネタ 命テーマもユーモア大事― スポニチ Sponichi Annex 芸能(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/12/01/kiji/K20161201013822860.html)
■放送情報
『ドクターX~外科医・大門未知子~』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:米倉涼子、内田有紀、遠藤憲一、勝村政信、鈴木浩介、岸部一徳、西田敏行、野村萬斎
脚本:中園ミホほか
音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、峰島あゆみ(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、山田勇人
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
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