『カムカムエヴリバディ』は甘くて切ないおはぎの味 美都里役のYOUが紡いだ母の真情
「小豆の声を聴け。おいしゅうなれ」
戦地から戻った算太(濱田岳)が耳にしたのは小豆を炊くなつかしい声だった。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第32話。戦場で算太が目にした「WAR IS OVER」。穏やかな日常は戦争が終わったことを実感させた。
クリスマスに帰ってきた算太はそのまま雉真家に居ついていた。安子(上白石萌音)が作ったおはぎに「まずいです」と算太。すぐに「うそじゃ」と打ち消し、いたずらっぽく笑った。安子に泥だんごをあげた第2話のシーンが脳裏に浮かぶ。ありし日にダンサーになると言って父を困らせた算太は、「たちばな」を一緒に立て直そうと安子に提案。少しの沈黙を挟んで口を開いた安子は、金太(甲本雅裕)も同じように話していたと兄に明かす。金太いわく「『たちばな』の菓子で救われる人がきっとおるはずじゃ」。算太が死線をさまよっていた時、思い出したのは「たちばな」の味だった。「親父ゃあ、何でもお見通しじゃ」。余韻を噛み締めるように空を仰いだ。
本作における重要アイテムのひとつであるおはぎ。隠し味に塩が使われていることはご存知だろうか? セピア色の記憶にはしょっぱい涙が混じっている。るい(中野翠咲)と美都里(YOU)が遊んでいるところに安子がおはぎを持ってやってくる。るいと2人になった美都里は稔(松村北斗)のことを話し始める。おはぎが好きだったこと、初めての夏休みに買ってきてくれたこと。話すほどに稔との記憶が次々とよみがえり、気がつけば泣いていた。