『二月の勝者』は親たちのドラマでもある 中学受験控える家庭にとって目が離せない理由
「頑張れ頑張れ受験生! 負けるな負けるな受験生!」
元ピチカート・ファイヴの小西康陽作曲による子どもたちのチャントが耳について離れない『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』(日本テレビ系、以下『二月の勝者』)。どう見ても原作の黒木蔵人にしか見えない柳楽優弥、原作とはかけ離れた設定の役柄にリアリティを持たせる井上真央、地味になりがちな画面に華を添える加藤シゲアキ、いつのまにか日本一のデブキャラ俳優になりつつある加治将樹をはじめとする助演陣と「桜花ゼミナール」に通う子どもたちの熱演もあって、週を追うごとに盛り上がりが増している。
なによりも中学受験――中受(ちゅうじゅ)を控える子を持つ家庭にとっては、身につまされる内容がびっしり詰まっていて、どうにも目が離せないのだ。
我が家には小学4年生になる子がいるが、中受対策の勉強は小4(正確には小3の春休み)から始まっているので、親子ともども『二月の勝者』を食い入るように観ている。子が通っているのは普通の公立小学校だが、場所柄もあってクラスの9割以上が中受をする予定であり、クラスのほとんどが『二月の勝者』を観ていると聞いた(黒木先生の髪型の話をすると大受けするらしい)。きっと親が見せているのだろう。
もともと高瀬志帆による原作コミック(小学館)は、中受家庭のバイブルとして知られていた。我が家にも早い段階から全巻がセットされ、妻から読むように厳命されていた。筆者のように地方出身者で小中高と公立に通っていた人間は関東での中受熱にピンと来ないことが多く、「小学生が受験勉強なんかしなくてもいい」「公立中学に進学して高校受験をすれば十分」と思ってしまいがち。そのような親が中受について理解を深めるために『二月の勝者』が最適なのだ。
第1話の冒頭、黒木は入塾説明会に集まった親たち(8割が母親)にこう告げる。「みなさん、覚悟はできていますか?」。その前に話していたのも、中受をめぐって起こった家庭崩壊のエピソードだった。黒木の決めゼリフは「合格のためにもっとも必要なのは、父親の経済力と母親の狂気」。親は受験の情報を集め、子の勉強のサポートだけでなく、塾の送り迎えや体調とメンタルの管理などを行う必要がある。もちろん、金銭面での負担も大きい(ドラマの中では年間132万円かかると説明されていた)。つまり、中受は子ども主導で行われる高校受験や大学受験と異なり、親の理解と努力が大きなウエイトを占める。