『二月の勝者』は親たちのドラマでもある 中学受験控える家庭にとって目が離せない理由
ドラマ『二月の勝者』では、子どもたちの両親役に実力派の俳優たちがキャスティングされている。サッカー好きの三浦佑星(佐野祐徠)の母親はNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でも主人公の母親を演じた西田尚美、父親は『MIU404』(TBS系)でエトリを演じた水橋研二。鉄道好きの加藤匠(山城琉飛)の母親は三谷幸喜作品で知られる堀内敬子、父親は東根作寿英。成績優秀な前田花恋(田中絆菜)の母親は高岡早紀。なかなか成績が上がらない武田隼人(守永伊吹)の母親は星野真里、父親は塚本高史。優等生の島津順(『俺の家の話』<TBS系>の羽村仁成)の暴力的で冷酷な父親は金子貴俊、臆病な母親は遠藤久美子。引っ込み思案の柴田まるみ(玉野るな)の母親は元宝塚の月船さらら。勉強に集中できない石田王羅(横山歩)の母親はNHKの朝ドラ『ふたりっ子』の岩崎ひろみといった顔ぶれである。
ほとんどが1話のみの登場であり、非常に贅沢なキャスティングだと感じる。これが意味しているのは、中受は子どもと塾講師だけでなく、親たちのドラマでもあるということだ。
もっとも大きな問題が、父親と母親の意見の相違である。特に厄介なのが、中受に理解を示さず、母親と子の足を引っ張る父親の存在だ。第1話にはサッカーに夢中で中受は必要がないと考える父親が登場し、第4話にはスマホゲームに夢中で中受にまったく理解を示さない父親が登場した。塾の費用を工面するために必死にパートで働く星野真里が、スマホゲームに課金してばかりの塚本高史に叫んだ言葉、「どうせなら私たちの子どもに課金してよ! 自分の子どもをクソ強いキャラに育ててよ!」に共感した母親は少なくあるまい。黒木はこう警告する。「ご夫婦の意見が一致してないと、中学受験は失敗します」。
なぜ小学生が遊ぶ時間や睡眠時間を削ってまで勉強してまで中受すべきなのかは、毎話のように描かれている。簡単にまとめれば、子どもの可能性を伸ばしていくには、中受をすべきだということになる。好きなことに打ち込む環境は、私立中学のほうが適していることが多いし、中高一貫校に入れば中3のときに受験で好きなことを中断する必要もなくなる。中間一貫校の増加という外部環境の変化も起こっている。
『ドラゴン桜』(TBS系)の桜木健二は「バカとブスこそ東大に行け!」と言っていたが、黒木に言わせれば「凡人こそ中学受験すべき」。我が子は天才だと確信があれば中受は必要ないかもしれないが、凡人だと思っているなら中受をしておいたほうがいいということ。凡人だって頑張れば成績は伸びていくのだから。
中受に懐疑的だった筆者も『二月の勝者』にふれることで、できる限りサポートしようと思うようになった。子どもたちは受験本番に向けて、どんどん白熱して戦士のようになっていく。これも黒木が言うように、中学受験では本人よりも親のほうが先に音を上げることが多いし、子どもは大人が思っているよりずっとタフだ。だからこそ、親は気持ちをしっかり持って、サポート体制を整えておかなければならない。
家庭によって考え方はさまざまだし、環境によって受験の必要性が変わるのは当然のことだが(身近に私立中学が少ない地域も多い)、子の中受を考える可能性が1%でもある親は、『二月の勝者』をマストで観ておくべきだと思う。
■放送情報
『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:柳楽優弥、井上真央、加藤シゲアキ、池田鉄洋、瀧内公美、今井隆文、加治将樹、住田萌乃、岸部一徳ほか
原作:『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』高瀬志帆(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:成瀬活雄
音楽:小西康陽
主題歌: DISH//「沈丁花」(ソニー・ミュージックレコーズ)
テーマソング:NEWS 「未来へ」(Johnny’s Entertainment Record)
演出:鈴木勇馬ほか
プロデューサー:次屋尚、大塚英治(ケイファクトリー)
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/2gatsu/
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