「日本はコンテンツ自給自足ができる珍しい国」 配信データサイトFlixPatrolのCEOに独占取材
「韓国のコンテンツのクオリティは本当に素晴らしい」
――先週、Netflixは2分以上視聴したアカウント数から累計視聴時間へとデータの収集方法を変更しましたが、何か大きな変化はありますか?
ヴィスコチル:この変更は確かに一歩前進と言えますが、まだ道のりは長いです。誤解を招く可能性のあった2分間の視聴アカウント数のデータよりも興味深いデータが得られると思います。視聴時間のデータは、今のテレビのビジネスに近いもの(注:アメリカなどの視聴率は総視聴人数で測定される)ですが、Netflixのビジネスモデルは広告で収入を得る古典的なテレビ業界ビジネスとは異なります。映画やドラマを長時間観た視聴者の数を知ることは、コンテンツ製作者にとっても有益でしょう。
――トマスさんに連絡を取ったのは、『イカゲーム』の世界的な人気をどのように分析しているかをお聞きしたかったからなんです。
ヴィスコチル:昨年からすでに、韓国のいくつかのシリーズの人気を目の当たりにしていました。FlixPatrolのサイトローンチ以来、韓国のたくさんのファンとコンタクトを取っています。韓国のコンテンツがこのような世界的影響力を持つのは時間の問題だと考えていました。なぜなら、韓国のコンテンツのクオリティは本当に素晴らしいからです。また、『イカゲーム』は完璧なタイミングで登場しました。というのも、この数ヶ月間、パンデミックの影響で新しいコンテンツの制作が延期されていたために良いコンテンツが少なく、世界中が本当におもしろい作品を渇望していたタイミングにすっぽりとはまったんです。
――では『地獄が呼んでいる』についてはいかがですか? 11月19日にNetflixで配信開始して以来、即座に世界No.1を奪取しました。この人気や傾向をどのように分析していますか。
ヴィスコチル:『地獄が呼んでいる』の即効性のある世界的人気は、人々が「韓国の新しいドラマシリーズ」に相当するコンテンツジャンルに本当に飢えているという証拠です。もう一つの例は、数週間前に配信開始された『マイネーム:偽りと復讐』で、こちらもNetflixの世界ランキングで圧倒的な人気を得ていました。これは昨年の『タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!』でも起きた現象ですが、この作品が配信された後、多くの実録ドキュメンタリーがランキングに入りました。このようなトレンドは波のように押し寄せてきますが、それを予測して、同じようなコンテンツをできるだけ多く配信することはとても難しいことです。韓国のコンテンツの場合は、すでに多くの優れた作品が準備されているので簡単なことでした。
――では、FlixPatrolのデータから、日本の視聴傾向をどう見ていますか?
ヴィスコチル:日本の視聴者は自国制作のコンテンツがとても好きで、多くの日本の映画やテレビ番組がストリーミングチャートの上位に入っていますね。でも、これは世界の国々と照らし合わせると典型的な視聴傾向とは言えません。なぜなら、ストリーミング向けだけでなく、質の高い大衆向けコンテンツを制作することができ、その国の視聴者を満足させている国は世界でも数少ないからです。日本は、英語圏以外ではフランス、イタリア、トルコ、韓国のような強力な映像制作国と同様に、本当に興味深い例外な国だと思います。
――ところで、トマスさんが今年楽しんだ作品を教えていただけますか?
ヴィスコチル:個人的に好きな作品ですか? 映画だと『DUNE /デューン 砂の惑星』と『Coda コーダ あいのうた』(注:海外ではApple TV+配信)、ドラマシリーズでは『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』(ディズニープラス)、『ビリオンダラー・コード』(Netflix)、『真夜中のミサ』(Netflix)ですね。そして、もちろん『イカゲーム』も最高でした。
――もしもFlixPatrolがビッグテック企業と戦ったら、『ビリオンダラー・コード』のようになるかもしれないですね……。すでに世界中でFlixPatrolのデータが重宝されていますが、次なる野望を教えてください。
ヴィスコチル:私たちの次の目標は、人気コンテンツやストリーミングに関する一次ソースデータを提供し、世界中のストリーミングサービスを網羅する独立した測定ツールとして機能することです。もちろん、他の機関からデータを収集し解析するよりもはるかに難しいことですが、このデータが全てのストリーミング産業にとって、次に到達する未来の姿だと考えています。