『恋です!』には古き良きラブコメの“丁寧な関係性”が詰まっている

『恋です!』の丁寧な関係性の描き方

 今、どの局もラブコメディを1クールに1本は作ろうとしているように思える。そのために、漫画原作を探してきたり、これまでに人気のあったラブコメディの要素を詰め込んだようなオリジナル作品を生み出したりと、各局が工夫を重ねているのが見える。

 そんな中、『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』は当初の心配をよそに、ラブコメディとしても成功しているように思う。

 先述の通り、弱視の主人公がどう生きているのかがテーマにもなっている。こうしたテーマがあるからこそ、彼女のことを好きになった森生が、ときにはガツガツと距離感を縮めながら、またときには、彼女を思う気持ちから踏み込み過ぎないようにしたりもしながら、丁寧に関係性を構築するような内容になっている。

 この丁寧に関係性を縮める様子というのは、実はラブコメディに最も向いているのではないだろうか。

 一時期は、何の脈絡もなく「壁ドン」があったり、1話か2話で、突然のキスシーンがあったりするラブコメディが多く、それを視覚的な刺激としてとらえ、SNSで拡散されるということもあった。だが、それでは、そんな瞬間を楽しみにしている人がファンにはなれても、ストーリーを追っている人はドラマを離れる原因にもなってしまう。

 本来は、相手のことを思い、ときには踏み込みすぎてはいけないと考えたり、相手の気持ちが少しでも近づいてきていると感じたら、少しだけ前に進む、そんなやりとりこそが、ラブコメディの良さだったのではないか。

 恋する2人のお互いに相手のことを考えながら距離を詰めていく様子がうまく描けているドラマであれば、キスシーンは自ずと全体の折り返しあたりになる。『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』のキスシーンが、第6話の最後にあったのを見て、ラブコメディの傑作である『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のことを思い出したのであった。

■放送情報
『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:杉咲花、杉野遥亮、鈴木伸之、奈緒、岸谷五朗、田辺桃子、細田佳央太、戸塚純貴、ファーストサマーウイカ、堀夏喜(FANTASTICS from EXILE TRIBE)、生見愛瑠
原作:『ヤンキー君と白杖ガール』(うおやま/KADOKAWA)
脚本:松田裕子
演出:内田秀実、狩山俊輔
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:森雅弘、小田玲奈、鈴木香織(AX-ON)
主題歌:「こたえあわせ」JUJU(ソニー・ミュージックレーベルズ)
(c)日本テレビ

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