『カムカムエヴリバディ』安子と稔に立ちはだかった現実の壁 儚い夢の終わり

『カムカム』安子と稔に立ちはだかった壁

 安子と稔の間に立ちはだかった現実の壁。千吉の言い分はもっともではある。学生の稔に比べて、小さい時から家業を手伝ってきた安子には、千吉の言っている意味がよくわかるはずだ。雉真家の跡取りである稔は、自分と一緒になるよりも決められた相手と結婚する方が家のためになるし、何より稔のやりたいことができる。戦時下ならなおさらだった。分不相応という引け目だけでなく、商いを生業とする厳しさを肌で感じていた。

 「ごめんなさい。私が間違うたんです」と繰り返す安子を見るのが辛い。生木を裂くような胸の痛みが伝わってくる。稔への思いを断ち切れない安子は、自分が間違っていたと考えるのが精いっぱいだった。「時間はかかるかもしれんけど、戦争が終わったら、大学卒業したら」と稔は言うが、正直慰めにしかならない。一度はたちばなのため、今度は稔のために安子は自分の夢を捨てることになった。戦争と共にラジオの英語講座は終わり、愛する人とひなたの道を歩むという安子の願いもはかなく潰えた。甘い記憶と悲しい余韻を残して、それでも物語は続いていく。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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